ホロウ・リアリゼーション-alternative-
「……わたしを、つれていってくれませんか?」
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う」
最低賃金。そんな単語が頭をよぎるとともに、ショウキの疑問の声もよそに少女はどこかへ消えていく。とはいえ文字通りに消えるわけもなく、ただフラフラと雑踏に紛れて歩いて行くだけだったが。確かにやったことと言えば、少女を転移門に連れていき共にイグドラシル・シティへ来たのみで、何をしたわけでもないのだが。
「……なんだったんだか」
それでもショウキとしては、多少ながら愚痴らずにいられなかったが、特に苦労をしたわけでもないと、愚痴をそれだけに留めて歩き出す。むしろ目的地で待っているだろう彼女には、いい土産話が出来たかと思うほどであり、転移門近くに栄えている商店街へと足を伸ばす。
商店街という名前通りに様々な店が密集しており、客入れがよい店もあれば悪い店もあったが、ショウキが目的地としていた店はあいにくの客入れのようだった。
「ただいま」
店の隣でなびく旗を横切りながら、裏口から店内に侵入する。扉を開ければすぐに工房ということで、店内は多少なりとも広いものの、客を招き入れるようなスペースはなく。よって屋台のように店員が外に顔を出して、そこで注文を承るシステムを導入しており、店番をしていた彼女が振り向いた。
「おかえり! ……どうだった?」
ボサボサに跳ねたピンク色のロングヘアを頭に巻いたバンダナでなんとか束ね、暑いのかツナギは半脱ぎで上半身はピッチリとしたシャツ一枚で晒していて。そんなピッチリしたシャツに支えられた胸部は、服も変わったせいもあろうが以前のアバターよりさらに……と、ショウキはその二つの暴力を見ないように努めていて。とにかく、矯正の意味合いはないが装備された伊達眼鏡も相まって、機械いじりの好きな変わり者の少女、といった雰囲気を感じさせて、ある意味でレプラコーンに相応しいアバターなのかもしれない。そんな先の姿とは似ても似つかないアバターではあったが、こうして出迎えてくれる笑顔は『リズベット』のままだ、とショウキも自然とはにかんでいて。
「……なによ、いきなり笑っちゃって。あたしの顔になんかついてる?」
「ああ、油汚れが」
「アバターで設定されてて取れないのよねぇ、これ……それで、首尾は?」
「さっぱりだ」
怪訝な表情でこちらを見つめ返してくるリズに、まさか笑顔に見惚れていたなどとは言えず、その頬についているシミのようなものに話題をすり替える。いかにも整備に夢中で気づきませんでした、的なあざと可愛さになる目立つようで汚いとは思えない汚れ――とはリズからのうけうりだったが、そんな油汚れを煩わしそうに顔から拭こうとするものの、アバターに刻みつけられたそれは消えることはなく。もう諦めたのか肩をすくめるリズに対して、ほとんど同じ動作で返していた。
「うーん、そこもガセだと
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