ホロウ・リアリゼーション-alternative-
「……わたしを、つれていってくれませんか?」
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もかくとして、町中で襲撃イベントというのも考えにくく、護衛の類いではないだろう。ならば本当に、この物言わぬ少女をイグドラシル・シティに送り届けるだけなのかと、そんなクエストの噂があったかと首を捻る。あまり公にはなっていない……とされていることだが、ここ《ALO》ではクエストはあるシステムによって完全に自動生成されており、まるで全貌を把握することは出来ていない。故にプレイヤー間での情報交換が盛んになっていたり、情報屋という商売が成り立っているわけだが……あいにく、ショウキはこの少女についての情報を持ち合わせておらず。
「あー……転移門は使えるか?」
そうしてNPCの動向に気を使いながらも、宿場から町の中央に設置された転移門へとたどり着く。イグドラシル・シティへ直通の転移も可能なため、もちろんこの場所に来たわけだが、NPCの少女が転移門を使えるか失念していて。背後をトコトコと着いてくる少女に確認すれば、幸いなことに伝わったらしく、少女はコクリと頷いた。
「つれていってくだされば、大丈夫です」
「連れていく……って言われてもな」
表情を変えることなくそう言ってのける少女に対して、多少なりとも悩んだ後に、少女の手を取って転移門の順番待ちの列に並ぶ。連れていく、というのがこれでいいのかは分からないが、ここまで来てはぐれるのも目覚めが悪いと、ショウキは知り合いに見つからないように祈りながら思う。
「転移! イグドラシル・シティ!」
幸いにも誰かに話しかけられるようなことはなく、少女とともに浮遊城の直下に浮かぶ、地上と浮遊城の交易地へと転移する。地上と浮遊城を結ぶのはこの都市だけということもあり、相変わらずな人混みに多少なりとも息が詰まってしまうが、もう慣れたものだとショウキは一息つく。
「ありがとうございました」
そうしてついでとばかりに、人口密度のもっとも厚い転移門の側から少女の手を引いて離れれば、無表情な少女からお礼の言葉をいただいて。結局、このクエストはなんだったんだか――と、ショウキが髪を掻くとともに少女から手を離すと、視界の端にクエスト達成を示すマークが浮かび上がった。
「これ、お礼です」
「あ、どうも」
馴染みの店でちょっとしたサービスを貰ったような、そんな返答を反射的に取ってしまったが、もちろんNPCの少女はそんなことに反応することはなく。先に放したばかりだというのに、手を差しのべてきた彼女と握手すると、クエストを完全にクリアした証とともに報酬が振り込まれた。得たいの知れないクエストだったからこそ、報酬ともなればどんなものか気になるのが人情というもので、内心に留めてはいたものの、ショウキもいつになく楽しみに報酬を確認すると。
「……1ユルド?」
「では、ごきげんよ
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