ホロウ・リアリゼーション-alternative-
「……わたしを、つれていってくれませんか?」
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けもなく。予想外にも泊まることとなった安宿から出ていくと、辺り一面に広がる古代都市を見渡してため息を吐く。見ての通りの外見からして、レアな鉱石が出るというガセ情報に踊らされたとしても、自分を責めたくはないところだとショウキは思う。
とある事情で《SAO》の時のデータを消したために、かつての店を手放してしまったショウキたちからすれば、安定した鉱石の入手先の確保は急務であるが、そう簡単に見つかれば世話はない。新しく店を始めたプレイヤーには、本来ならばレプラコーンの商人連合からの支援があるのだが、人気店を勝手に辞めた前科のあるリズベット武具店にはそれもない。
「……はぁ」
店で待っているはずのリズにどんな顔をして会えばいいのか、と思いながらも、ため息をもう一度だけと決意してショウキは気を入れ換えると。アバターを変えた時に決心した脱・根暗はまだショウキの心中にくすぶっており、癖となった髪の毛をぐしゃぐしゃと掻く動作とともに歩き出すと。
「……ん?」
――目の前には、昨日ここらを調べた時にはいなかったNPCが立っていた。前髪をぱっつんと切り揃えたショートカットの黒髪に、水色のワンピースと足元のサンダルと、とてもモンスターがいる世界の住人とは思えぬ軽装の少女。まるで人形のようだ、という第一印象のままに、古代都市をフラフラとただただ歩いていて。
「…………」
じっくりと見ていてしまったからか、あちらの少女もこちらに反応して視線が交差する。しかして目と目が合ったというのに目立った反応もなく、こちらを見据えながらもゆっくりと歩き出してきた。
「……わたしを、つれていってくれませんか?」
「あ……ああ」
舌ったらずな言葉とともに、少女の頭上にクエスト開始を示すマークが浮かぶとともに、こちらのログが更新されていく。内容はただの一言、『イグドラシル・シティへ連れていけ』という単純なもの。反射的に肯定する答えを放ってしまったものの、どうせ今から帰るところだとショウキが受け入れるのを見計らったように、少女の頭上にあったマークがクエスト進行中のものへと変化して。
「……ありがとうございます」
お礼の言葉とともにNPCの少女はショウキの背後につくと、それきり何も語ることはなかった。ただキョロキョロと辺りを見渡しながら、黙ってこちらが歩いてくる方向に着いてきていて。
「……」
……少し、立ち止まってみれば。そのNPCの少女もまた、まるで親に連れ添っている子供のように、こちらの動きと連動してピタリと立ち止まった。とはいえ特に何も言うことはなく、不思議そうな視線をこちらに向けてきて、いたずら心で立ち止まったことにばつが悪くなってしまう。
「変わったクエストだな……」
フィールドならばと
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