ホロウ・リアリゼーション-alternative-
「……わたしを、つれていってくれませんか?」
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カリカリと小気味良い音が教室に響き渡る。巷ではVRだのARだのと騒ぎにはなっているものの、教室の風景などというのはそうそう変わらないらしい、とリズはペンを走らせながら考えて。
「…………」
ふと顔を上げてみると、そこにはこれでもかと眉間にシワを寄せて課題に取り組む彼が目に入って。一見すればクールだのと噂されるようなルックスで、実際の彼も確かに感情を表に出さない方ではあるが、クールというより根暗だというのが自他ともに認めるところだ。彼本人としても最近は脱根暗を目標として掲げているが、目標が達成される目処はたっていない。
「……どうした?」
「ううん、ここ間違ってるわよってだけ」
流石にずっと見続けていたからか、怪訝な表情で彼も見返してきて。まさか、あんたの顔を見てただけよ、などと素直にリズも言えるわけもなく、ひとまず適当に理由をでっち上げると。課題の計算式が間違っていたのは確かであり、生真面目にも苦虫を噛み潰したかのような表情へと変わる彼――ショウキに、何もそこまで気にすることも、とリズもつられて苦笑いを見せる。
「何かあったの?」
「……なあ、リズ。本当に、本当に俺の心とか読んでないよな?」
「んなわけないでしょー」
ショウキの間違いを修正する手もピタリと止まり、困った時の癖である髪の毛をクシャクシャと掻く動作を見るに、課題に集中できない何かあったのは事実のようだ。ショウキ本人は見栄っ張りなため、何かあっても顔には出してないつもりらしいが、わりと分かりやすいというか何というか。生来からして生真面目のようで、そもそも隠し事が出来ないタイプなのだろう。
それに彼のことをあたしは理解できているのだと実感するようで、なかなかリズとしても気分は悪くない。ショウキからすれば、たまったものではないだろうけれど。
「それで? 茶飲み話くらいにはなったりしない?」
「……俺たちの……将来のこと、なんだが」
「へ?」
こう見えても成績優秀を自負しているリズは早々と課題を終わらせ、ようやく修正を済ませたショウキに軽い気持ちで先を促すと。まるで予想だにしていなかった言葉に、リズも反射的に奇声を発してしまった後に、ショウキの言葉が脳内で反芻される。
ショウキとリズ、二人の将来の話。それはつまり。
「なに言ってんのよ! そんなの……ま、まだちょっと早いでしょ!」
「……悪かった! こっちの言い方が全面的に悪かった。そういう話では……あるんだけど、あー……最初から話すから落ち着こう、うん」
普通なら、あんたが落ち着けとリズが一喝するところだが、今回ばかりはショウキの方が幾分かは落ち着いていたようだ。こめかみを抑えて言葉を選びながら、そんなことを口走った経緯をゆっくり
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