第0話 始まりの夢
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娘は気配断ちが得意の様でな。それで気付かなかったか。
宙を歩く様に、1人の女性がやってきた。そして更にもう1人。
「法王特典……。彼女は貴方様に付いていく為にその権利を使った。ふふふ。私も驚きました。いつものただの謁見。ただの暇潰しとさえ思っていたのに。……法王と一緒に まさか貴方様に会う日が来るなんて……」
それは 神々しい光を放ち、宙に浮く無数の剣を従わせている女神ALICE。
白い巨大な何かの傍らへと降り立った。
「貴方様が姿を消して幾星霜……。私も一目お会いしたいと思ってました。……貴方様が姿を消した理由も知らずに。なのに私はお会いしたいと望んでいました。……本当恥知らず、ですね」
敬意を示す様に首を垂れる女神ALICE。完全な主従関係がその場に見えてとれる光景だった。普通であれば、驚くべき所だが もう1人の女性…… 法王は取り乱した様子も驚いた様子も見せない。全ては知っていたから。……すべて教えてもらっていたから。
だからこそ、少し早くにここへ来る事が出来た。
此処とは違う別の世界で、別の自分がいたとするならば……早くどころじゃなく ひょっとしたらここへ来られなかったかもしれない。全てを知る事が出来なかったかもしれない。
でもそれは自分自身にも、恐らくこの場の神でさえも知りえぬ事だろう。
―――自身の本能に、役割に従ったまでの行動だ。恥じる事など無い。そこから抜け出す様な者は相当な変わり者……。ふふ。言うならば同級のあの娘だろうな。
向けていた視線を女神ALICEへと向けてそう微笑む。ただのそれだけで身体全体紅潮する思いだった。
「……ええ。その通りだと思います。今の私であれば、彼女の気持ちは判ります。………心から惹かれた相手の傍にいたい。と言う強い願い。そして想いを」
その結末がどうなるのかはわからない。ただ苦しむだけなのかもしれない。だけど、前に出て進まなければ何も得ない。だからこそ、彼女は動いた。自分の気持ちに従って……。その後の結果は誰も知らなかった。知ろうと思えばできた事だが、誰もしなかったと言うのが正しい。
―――あの娘は きっと大丈夫だろう。地上には 心強き者達が多い。最早私がいなくとも………。いや、それは不味いか。
『私がいなくても良い』と言いだそうとする前に男の傍らにいる女性がその脇を少しだけ突いた。
―――精神は兎も角、今の肉体は我が主の物。……還さない訳にはいかないか。この話も聞いているしな。懐かしい顔ぶれに会う為だからと私に譲ってくれたのを忘れていたよ。私の影響で主も……、そしてその父親の代も神を心から恨み貫いていたと言うのに、心穏やかになってくれ
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