第二章:アルヴヘイム・オンライン
第二十二話:傷痕
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。また、勉強の自由度も高く、大学のように自分のやりたい授業を選択できるという点も大きい。
「そっか。なら、いいんだけど…」
そう言って、ユウキは再びテレビへ目を移した。少し拗ねたような表情なのは、さて。
「心配してくれてありがとな」
御機嫌を取る訳ではないが、ユウキの頭を撫でる。テレビを見たままされるがままの彼女に笑みを浮かべると、テーブルに置いていたスマートフォンが振動した。
「ん?ALOの方か」
「あ、ボクの方にも来てる」
メッセージが届いたのは個人のアカウントではなく、スリーピング・ナイツとして登録しているアカウントに対してだった。ユウキと顔を見合わせて、メッセージを開いてみる。
「護衛依頼?」
「……そうみたいだな。だが?????」
文面を見ると、どうやらスリーピング・ナイツに護衛を依頼したいという内容だった。
確かに、スリーピング・ナイツは偶にプレイヤーからの依頼という形で護衛を請け負ったりもしている。しかも、そう珍しいことではない。ただ、今回のは少々快諾するには躊躇う理由があった。
「?????依頼主の、『サクヤ』って…」
「確か、シルフの領主だったはずだ。なんだってそんな奴がスリーピング・ナイツに護衛を依頼するんだ?」
ALOに存在する九つの種族のうちの一つ。魔法を扱う戦闘に長け、サラマンダーには及ばないものの種族全体で見れば繁栄が進んでいる種族。それが「シルフ」だ。勿論、保有する戦力も相当なものだろう。ただの護衛なら、自領の戦力で事足りるはずだ。
「とにかく、明日会ってみようよ。なんか怪しかったら断れば大丈夫!」
「そうだな。よし、今日はもう寝よう。少し疲れた」
凡そ二年ぶりに帰ってきた家は、ユウキのお陰で記憶にあるのと大差はなかった。オレにあてがわれていた部屋も、小物類は減ったが大して変わってはいなかった。
テレビを消し立ち上がり、ユウキがこちらへ来るのを見てリビングの電気を落とす。オレたちの部屋は二階に一部屋ずつあった。ユウキは藍子と二人部屋だったが、彼女が入院してからはずっと一人で使っているという。キッチンから麦茶をコップに入れ、いざ二階へ上がる階段を登り始めると、ユウキに袖を引かれた。
「どうかしたか?」
そう問いかけても、ユウキはしばらく答えようとしなかった。照明を全て落としてしまったからか、俯かれたユウキの表情は窺えない。
それでも少し待って見ると、ユウキは勢い良く顔を上げた。
「ごめん、なんでもないよ!」
笑顔で言って、ユウキはオレの横をすり抜けて階段を登り切った。そのまま自分の部屋へ小走りで向かうユウキの袖を、今度はオレが掴んだ。
「……兄ちゃん?」
振り
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