第二章:アルヴヘイム・オンライン
第二十二話:傷痕
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からない兄に、『自分がどれだけ本気なのか』を伝えるには、それしかない。
だからまずは、思い切り言ってやるのだ。二年間も家を空けた不良の兄貴に、心からの言葉を。
「木綿季、ただい―――」
?????『おかえり』っ!!
† †
「おっ、と」
飛び込んできた小さな体を抱き留める。それだけでよろける体を苦々しく思いながら、オレはユウキを抱きしめた。
「うん。ただいま、ユウキ。ごめんな、心配かけて」
「ううん、いいんだ。兄ちゃんが無事に帰ってきてくれたからさ!」
思わず顔を背けてしまいそうになる程の満面の笑み。
ユウキがオレに向ける信頼が、眩しすぎた。
「本当に、ごめん」
だから、こうして抱きしめる力を強めることしかできない。そんな自分が情けない。
「もう、そんなに謝らないでよ。ボクね、本当に嬉しいんだよ?」
それでも。
それでも、もしもユウキがオレのことを赦してくれるというのなら。
「オレを、赦してくれるか?」
こちらの胸に犬みたいに顔を擦り付けてくるユウキに問いかける。すると彼女は顔を上げ、そして微笑んだ。
「ボクは別に怒ってないんだけど。
でも、もし兄ちゃんが赦しを請うなら、ボクは兄ちゃんを赦すよ。だって、兄ちゃんはちゃんと帰ってきてくれたんだもん」
「―――――」
ああ。
その言葉だけで、少しだけ、心が軽くなる。
オレは彼女の心に深い傷を負わせてしまった。それでも、彼女が赦してくれるのならば、オレはせめて彼女を、ユウキを精一杯愛そう。言葉を交わすことすらできずに死んでしまった義両親と、オレに託してくれた義妹の分も。
それが、オレに許されたこの世界での贖罪なのだと信じて。
「ありがとう。そしてもう一度言うよ。
『ただいま』、ユウキ」
† †
「……あの、ユウキさん…?」
「んーー?」
時刻は七時を回った頃。ユウキが作った夕食を食べ終え、風呂から上がったオレがソファでテレビを見ていたときだった。
なるべくテレビから目を逸らさないようにしているオレのすぐ横には、同じようにソファの上で膝を抱えたユウキの姿が。
風呂上がりだからか、上気した頬やパジャマの襟首から覗く鎖骨から抑えきれぬ色気を感じて、オレは思わず天を仰いだ。
(そりゃ、二年も経つんだもんな……)
二年という月日は世界情勢なんかの大局よりも、むしろ身近で感じることが多い。
一番顕著なのは、ユウキの成長だ。SAOに囚われる前、彼女はまだ中学に入ったばかりの子供だったが。
「どうかした?
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