第二章:アルヴヘイム・オンライン
第二十二話:傷痕
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そして、一体なにをするつもりなのかを。あの薄ら笑いの裏にあった真意を。
「そうか、では力を借りることにしよう。よろしく頼みますよ、『終世の英雄』様?」
「……なんですか、それ」
「知らないのかい?君は業界では有名だよ。SAOの世界を終わらせた英雄、とね」
「茅場を直接倒したのはオレではないのですが」
「まあ、細かいことは気にしないでいいじゃないか。ああ、そうだ。君の報酬の話をしよう」
知らないところで恥ずかしい綽名をつけられていたらしい。できれば即刻取り消してもらいたいものだが、聞き入れてもらえそうにはなかった。まあ、直接オレの耳に届かない限りはよしとしよう。そうでもなければ耐えられない。
「形式としては、日雇いのアルバイトのような扱いになると思う。まあ、他の日雇いよりかは遥かに収入は期待できるけどね。それ以外に、君からの要求はあったりするかい?」
「…随分と待遇がいいんですね。まあ、こちらとしては好待遇に文句はありませんけど」
好待遇であることには、必ず意図があるのだろうが、残念ながらオレ程度の想像力では思いつかない。ならば、精々利用させてもらうことにしよう。
「人探しを頼みたい」
† †
曰く、解けない問題が気に食わないと。
故に、難関私立中学校へ進学できるほどに死に物狂いで勉強した。
曰く、喧嘩で負けることが屈辱だと。
故に、近くにあった武術道場にて僅か数か月で師範代と対等に渡り合える技術を身に着けた。
特別な理由があった訳ではない。
ただ、死に物狂いで全てに取り組んだだけ。それだけで、彼は大抵ものを手に入れてきた。
人は彼を天才だと謳う。
しかし彼はそれを否と言う。
当たり前だ。彼が元から持っていたものなど何もない。全てが義理の親より与えられたもの。学力も、義両親が学校へ行かせてくれたから。武術も、義両親が道場に通わせてくれたから。
何も知りはしない誰かが、彼と義両親の今や唯一となってしまった繋がりを、『才能』などという一言で片づけるのは、彼が許さなかった。
■■縺が紺野夫妻に引き取られたのは凡そ七年前のこと。八歳の頃に両親を亡くした縺は、二年間を児童養護施設『マグノリア』で過ごした。その後亡くなった義両親の友人を名乗る紺野夫妻の申し出を受け入れて、紺野家の一員となった。
それが、紺野木綿季が知っている義兄だった。
?????オレはまた、大切な人を守れなかった
そう呟いた義兄の顔が、忘れることができない。
ベッドに倒れ込んで、木綿季は唇を噛んだ。
義兄があの世界で何をしてきたのかは分からない。聞こうにも、あの
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