第二章:アルヴヘイム・オンライン
第二十二話:傷痕
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の犠牲者がいた。
一人は『カムイ』という名の少年。元々はじまりの街で過ごしていたのだが、持ち前の正義感からか、一刻も早くこの鉄城から皆を開放したいという理由で、当時は攻略組の二軍扱いだったアイギスに入団を申し込んできた。呑み込みが早く、防戦に長けたメンバーが殆どなアイギスの中では、貴重なアタッカーだった。だがそんな彼は、レッドギルド『笑う棺桶』の策略に巻き込まれ、帰らぬ人となった。
もう一人は『カリギュラ』という名の男。この男はオレがネロと出会う前から彼女と行動を共にしていた男であり、二人はリアルでも知り合いだったという。いつも人のよさそうな笑みを浮かべており、彼はエギルのように、自分で稼いだコルを下層で生活するプレイヤーへ支給していたという。この男はカムイが殺された後、死の恐怖や攻略組プレイヤーだという重責に負け、オレたちの目の前で投身自殺を行った。
「生きているはずは……」
「…だが、実際にこの男――「相良陵介」は生きている。話を続けよう。
須郷伸之はALOの運営であるレクト・プログレスの一スタッフではあるが、実質的なトップは彼らしい。そして、ネタ元は明かせないが、須郷がALOを利用して何らかの実験を行っているという情報があった。それに加え、調べを進めていくと、ALOはSAOのサーバーを丸ごとコピー、流用して開発されたものだという。この時点で、SAOのユーザーをALOに閉じ込めておくのは、技術的に可能だ」
「そこまで分かっているのなら、立件できるのではないのですか?」
「残念ながら須郷が実験を行っているという証拠がない限り、例え立件できたとしても白を切られるだけさ」
菊岡さんはそう言ってカップに手を付けた。
もし、その須郷伸之がALOの内部で何らかの実験を行っているとするのなら。
「つまり、オレにはその証拠を掴めという訳ですか」
菊岡さんがオレに望むものは、それしかないだろう。実験を行っているという証拠がALOの中でしか得られないのなら、専門家に委託するという話で納得できる。
「理解が早くて助かるよ。そう、君に頼みたいのは証拠を掴むことだ。勿論、少しでも危険だと思ったのならやめてくれても構わない」
「…いえ、やらせてください。この事件がSAO絡みである以上無視することはできないですし、カリギュラ――いや、相良陵介のことも気になる」
相良陵介は、ネロ――茅場茜音とリアルで知り合いだったという。
ああ、だとするならば、相良が生きていても不思議ではない。なぜなら、茅場茜音に死の枷はついていなかった。相良も同様であった可能性が高い。
もし本当に彼が生きているのならば、問わねばならない。何故、SAOのプレイヤーを閉じ込めているのか。
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