「ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも……わ、た、し?」
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頬張るには向いていなかった。フーフーと息を吹いて冷ましながら食べていれば、プレミアが一口食べてからピクリとも動いていなかった。どうしたものかと、ショウキが声をかけると。
「…………美味しいです」
「……お粗末」
どうやら感動にうち震えていただけだったらしく。瞳を輝かせながらモグモグといった擬音を思わせる、見事な食べっぷりを見せてくれたが、その代償は小さくはなかった。細かい芋の破片が口の周りにベタベタと貼りつき、ひどくみっともなう絵面となっただけだが。
「あー……もう。ほら、拭いてあげるからちょっと動かないでよ」
「すいません」
「……オイ」
放っておけなくなったリズが、残り少なくなくなっていた自分の焼き芋は一口で口に放り込み、ハンカチを持ってしゃがんでいって。その隙という訳ではないだろうが、ショウキに向けて背後からアルゴが小声で話しかけてきて。
「……プレミアのこと、どう思うんダ?」
「ただの食い意地の張った子供にしか見えない」
「直球だナ」
「まあでも……おかげさまで、楽しくやってるよ」
自らの問いに迷いなく即答されてきたことが少しおかしかったのか、アルゴは小さく吹き出しながら。とはいえそれはショウキの偽らざる本音でしかなく、もちろん次に言い放った言葉も間違いなく。こうも毎日、先程の斧のような天然系イベントが続けば、慣れが来るというか楽しまない方が損だ。
「けしかけておいて今更だけども、本当にいいのか? プレミアの戦闘訓練」
「本当に今更ダ。一生に一度のサービスだからナ、せいぜいプレミアに感謝しろヨ……それに、訓練の最後はアーたんに見てもらった方がイイ」
「アーたん? ……ああ、アスナか」
言われてみれば適役だ。片手で使いやすい武器の扱いなら右に出る者はおらず、実際に他のプレイヤーに戦闘を教えた経験もあり、事故があっても大丈夫なようなヒールを覚えており、何よりプレミアのことを知っている。
……アスナ以外の他のメンバーは最近、二人の邪魔をするのは悪いから――などと、店に立ち寄ることはなくなっているというのもある。とはいえ、この店は仲間たちの活動範囲とは少しズレているし、まだまだ腕前も足りないのも事実であるが。
「ま、オレっちがフィールドに出られるくらいにはしてやるヨ。もちろんショウキにも手伝ってもらうゾ?」
「それは……もちろんだ。何をすればいいんだ?」
そうして偶然にもアルゴと同じタイミングで焼き芋を食べ終わり、ほどよい満足感と微妙に足りなさを感じながら、アルゴに問い返してみれば――不敵な笑いが返ってきて。
「もちろん、的にでもなってもらおうかナ」
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