「ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも……わ、た、し?」
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浮遊城アインクラッド第三層《マロメの村》。その片田舎にある誰からも注目されていなかった鉱山の中腹、竜人たちが住まう洞穴の中心に、彼らが崇拝する聖樹が存在していた。以前に寄生虫へと養分を奪われていた姿からは幾分か持ち直したものの、まだまだ十全なものには届いていないらしい。確かにショウキが見上げる聖樹とやらは、いつかの浮遊城百層ボスが操っているものとは随分と違っていて。
『……助かる。これで聖樹も少しは持ち直すだろう』
「お互い様だろ」
そこでショウキが最近知り合った情報屋に聞かされ、持ってきた素材は聖樹の成長を促す効果があるらしく。もはやこの場に残った最後の竜人ギルバートには、なかなか役に立つ代物だったようで。とはいえ、ショウキはその聖樹から産み出される鉱石を貰いに来ているため、本当にお互い様だと言うべきだったが。
以前の聖樹を救出するクエスト。竜人ギルバートに協力して、聖樹に巣くう寄生虫を消滅させる――といった旨のクリア報酬として、その聖樹の力で現出するというレアな鉱石を入手できるという、新装開店した我らが新生リズベット武具店にはありがたい話で。
『いいや、聖樹を救わせてさらに助けてもらうなど、竜人の誇りに関わる。これも受け取ってくれ、扱いが難しい分、研磨できれば役に立つはずだ』
「……どうも」
ただし竜人の誇りとやらは随分と強情なものらしく、麻袋に入ったいっぱいの鉱石をさらに報酬として渡される。もちろんありがたくいただくと、さらにクエストが更新されていく。どうやら聞いていた通り、聖樹が力を取り戻せば取り戻すほどに、特殊鉱石のグレードも上がるというクエストのようだ。
『また来て欲しい。君たちのためならば、鉱石を渡すのも聖樹は許してくださるだろう』
「ああ。また、あの素材が手に入れば」
そうしてNPCとはいえ良き取引相手となった竜人ギルバートに別れを告げて、聖樹に一礼するとショウキは洞穴から出ていって。ただ鉱石を貰えるだけでもありがたかったというのに、さらに鉱石のグレードまで上がるというのだから、鍛冶屋にとっては文句のつけようもない良クエストだ。
「……どうダ?」
「おかげさまで。お釣りが来るぐらいだ」
そうして洞穴の入り口に背中を預けている、当の最近知り合った情報屋――アルゴの姿を見て、計画通りとばかりにニヤリと笑う彼女に釣られて、小さく笑って挨拶すれば。彼女もここにはもう用はないのだろう、歩いて転移門まで向かおうとするショウキに並走すると。
「いい素材を貰ったみたいだが、使えそうカ?」
「もうちょっとスキルレベル上げが必要だな……いや、リズなら出来るかもしれないが。ありがとう」
「にひひ。オレっちはそれが仕事だからな、言葉だけは受け取っておくヨ」
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