巻ノ百三十二 講和その二
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「奥御殿が狙われておるぞ」
「茶々様のおられる」
「あの場所がですか」
「狙われているのですか」
「そうなのですか」
「うむ、茶々様ご自身は狙っておらぬが」
それでもというのだ。
「あの方のお心を狙っておられる」
「若しもです」
ここで大助が言ってきた。
「茶々様に当たらずとも」
「それでもな」
「茶々様の御心はそれで、ですな」
「怯えられてな」
そうしてというのだ。
「講和を言い出される」
「そうなってですな」
「負けてしまうわ」
そうなってしまうというのだ。
「我等は」
「では」
「何とかしたいがな」
幸村にしてもというのだ。
「どうにも出来ぬか」
「大砲が億御殿に届けば」
猿飛が言ってきた。
「流石に我等も砲弾はどうにもなりませぬし」
「左様、それがし達が風を操りましても」
風を使う由利も言う。
「砲弾の動きを変えることは出来ませぬ故」
「この風ですと」
筧は風の流れから言った。
「流れを使いますと弾は届きませんな」
「ううむ、どうすればよいか」
清海も深刻な顔である。
「この状況は辛いですな」
「霧を出して狙いを乱そうにも」
霧隠は彼の術から述べた。
「もう奥御殿の場所はわかっていますしな」
「後は撃つだけです」
穴山も難しい顔であった。
「そして奥御殿まで届けば終わりとは」
「全く以て辛いですな」
海野もどうしていいかわからない。
「この状況では」
「殿、やはり我等が無理にでも攻めてです」
望月は主である幸村に申し出た。
「砲を壊しましょう」
「そうするのがよいかと」
根津もこう幸村に話す。
「一刻の猶予もなりませぬし」
「我等にお命じ下さい」
沈着な伊佐も主に申し出た。
「後の責は我等が取ります」
「いや、また言うがお主達だけで攻めても相手は万全な備えをしておる」
幸村は出陣を申し出た十勇士達に返した。
「それではお主達だけで攻めるよりな」
「殿も攻められる」
「軍勢と共に」
「そうせねばなりませぬか」
「どうしても」
「それは出来ぬ」
茶々の許しが出ていないからだ。
「これまでの様なちょっとした夜討ちや迎え討つものではないからな」
「ですな、到底」
「それはですな」
「出来ませぬな」
「流石に」
「そうじゃ、だからな」
それ故にというのだ。
「やはり出陣は出来ぬ」
「では父上、最悪今講和も」
「あるわ、そしてその時はな」
「幕府の言うままにですな」
「講和もあるわ」
「そうなればもう」
「負けじゃ、我等は」
そうなってしまうというのだ。
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