45部分:第八話 はじまってからその一
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第八話 はじまってからその一
はじまってから
寮での生活ははじめての集団生活なので色々と戸惑いましたけれど。先輩達が皆とても優しいし同級生ともすぐ仲良くなれて幸先よいスタートでした。けれど。
「あの、ちょっと」
教室で女の子がスポーツ新聞を読んでいます。これにはかなり驚きました。自宅から通っている子ですけれど幾ら何でもこれは。
「学校でそれ読むのはまずいんじゃないの?」
しかも女の子が。けれど彼女は平気な様子で私に答えてきました。
「これ借り物なの」
「借りたの」
「ええ、あっちの男の子からね」
見れば彼もスポーツ新聞を読んでいます。しかもディリー。それだけで彼が何が目的でスポーツ新聞を買ったのかわかってしまいました。
「借りたのよ」
「そうだったの。何も言われないの?」
「何もって?」
逆に尋ねられました。
「何がよ」
「いや、だから」
かえって私が戸惑って。変なふうになってきました。
「おかしくないかなあって」
「何処が?」
こうも言われました。
「阪神の結果見ているだけなのに」
「阪神の」
「そうよ。勝ったかどうかね」
楽しそうに私に言いました。何か本当に何も悪くないって感じで。そりゃ校則にも学校の中でスポーツ新聞読むなとかは書いていませんでしたけれど。
「それを見ているだけじゃない」
「まあそうだけれど」
「誰にも迷惑かけていないわよ」
それも確かです。新聞読んでるだけですから。
「それにこれ自宅用のスポーツ新聞だし」
「それって何かあるの?」
これにはわかりませんでした。スポーツ新聞って自宅用とかそんなのがあるんですか。
「あるのよ。あのね」
「うん」
「いやらしい記事がないのよ」
「いやらしい!?」
そう言われても何が何なのか。ついつい首を捻りました。
「何、それ」
「何ってあんた」
呆れた顔で言われました。
「だから、スポーツ新聞よ」
「うん」
「中に風俗とかそういう記事があるじゃない。それのことよ」
「あっ」
言われてやっと気付きました。そうです、スポーツ新聞ですからそうした記事は常です。やっと気付いて何かもう顔が真っ赤になるやら。全然わかりませんでした。
「だからなのね」
「そういうこと。わかったわね」
「え、ええ」
「それがないからいいのよ」
「そうだったんだ」
「それでだ」
そのうえで私に言ってきました。
「あんた野球に興味ある?」
「ええ、まあ」
その問いにはすぐに答えることができました。それでしたら。
「一応は」
「何処のファン?」
「阪神よ」
やっぱり阪神ですよね。そこ以外応援する気になれません。子供の頃からずっとあの縦縞のユニフォームを
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