第二十五話:生存者
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戯にうつつを抜かす出来損ないの集団。
というのが、ISを駆る者達に対する彼らの反応だった。実際彼らは、主にIS部隊の後始末やIS操縦者・そのスポンサーが起こした諸々の問題に対する火消し行為によって糊口を凌いでおり、軍人としての矜恃や意義を土足で踏みにじってきた彼女たちに並々ならぬ憎悪を滾らせてきていた。
そして、自分たちと同じ様に零落してきたIS界隈の連中を、こうして蹂躙することだけが生きがいとなってしまっていた。女尊男卑派やIS操縦者は基本的に一枚岩ではなく、様々な派閥が無意味に争いを繰り広げており、落ちぶれるものには事欠かない状況なのだ。
「こちら第一小隊、ワイバーン・リーダー……第一目標を確認。第二目標は現在逃走中につき、第一目標を射殺後、追跡する」
背後に待機している部下たちに、ハンドサインを出して集合の合図を送りつつ、型落ちの無線機を取り出して定時連絡ついでに目標の一人を発見したことを報告し、無線を切った瞬間。ワイバーン・リーダーと名乗った兵士は、ふと追従してくる部下達が何の反応も見せていないことに気付いた。自らと同じIS関係者を憎むに値する過去を秘めた者達が、何のリアクションも見せていないのだ。
──振り向くと、目が合った。アジア系の黒い目だ。彼の部隊にアジア人はいない。
部隊のものは皆地に伏していた。皆「うつ伏せに倒れながらも天を仰いでいる」状態だった。
「コンタクトォ!」
会敵のサインを叫びつつ、ライフルを構えるワイバーン・リーダー。眩いマズルフラッシュと共に漆黒の双眸の片方が弾け、ぬるぬるとした赤黒い塊と脳の欠片がミックスされたものと共に飛び散った。
「くそっ、くそっ!ナメやがって!即死させちまった!!」
同胞を惨殺された恨みを即死というカタチで晴らしてしまった事に、彼は悪態をついた。死者は何も反応を返さないが故に、恨みつらみを晴らしている感覚がどうしても薄くなる。
「鼻の一つでも削いでやるか、残ってたらの話だが」
ワイバーン・リーダーは鞘からナイフを抜くと斃れた相手に歩み寄った。しかし、眼前に居たものはヒトの形をしていなかった。真っ黒なコールタールを思わせる粘性を帯びた物体が、痛みを堪える生き物のように痙攣している光景に、ワイバーン・リーダーは一瞬思考が真っ白になった。
「遠隔操作はこんな感じか、協力してくれてありがとな」
「!!」
背後から聞こえた声に反応したワイバーン・リーダー。しかし、彼の視界は両断された。脳天を両断されたことに気付いたが、既に利き腕は微動だにせず、一歩前進しようと辛うじて足を動かした時点で、視神経は残された瞳に何も映すこと無く、只々ナイフが虚しく宙を掻いただけで終わった。
ハ
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