第二十五話:生存者
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ご」
埒が明かないことを察したのか、青年はクラリッサをベッドに座らせると、敬礼した。
「ご無礼をお許し下さい、ドイツ陸軍第291猟兵大隊所属、ハンス・イイジマ一等兵であります!」
実直を絵に描いたような真っ直ぐな敬礼に、クラリッサは囚われのヒロインと化したと錯覚し、自らに酔いかけたものの、瞬時に正気を取り戻した。ハンスが入ってきた足跡に濃厚な血痕が付着していたからだ。
「その足元は……そ、そうだ。黒兎部隊はどうなった!?」
慌てて状況を確認しようとしたクラリッサに対し、ハンスは淡々と述べ始めた。
「今回の蜂起は、主犯格の黒兎部隊のISの内の一機が暴走した事により失敗しました。主犯格のエレナ・ディートリヒ少佐は即死。その他の蜂起に参加した兵士たちも暴走したISによって全滅した模様です」
「暴走……だと?」
思いもよらぬ単語の登場にクラリッサは青ざめる。
「何故だ!?定期検査では……」
「VTシステムですよ。隊長機にはアラスカ条約で禁止されていたVTシステムが搭載されていたんです」
「VTシステムだと!?」
クラリッサは今度こそ凍りついた。ISに携わる者達ならば遵守することを義務付けられている条約を、あろうことか国家が破っていた事実が急激に体温を奪っていく。長期にわたる絶食も相まって、彼女は文字通り意識を手放した。
脳を揺さぶる轟音によって、クラリッサは意識を取り戻した。視界に映ったのは眩い夏の空を焦がす猛火と黒煙。そして原型を留めぬ程空爆された基地だった。
「何が……あったんだ!?」
「先程、最寄りの基地から発進した爆撃機による空爆です。周到に用意されていたみたいですね。これでは調査しても消し炭くらいしか発見できないでしょう」
振り向くと、倒木に腰掛けて水筒を傾けているハンスと目が合った。周囲を見渡すと、雑木林が散在していることから、現在地は基地から数キロ離れた山中に居るようだった。
「基地の食料庫から頂戴したのですが、食べます?」
ハンスはポーチから携帯糧食を取り出すと、クラリッサに手渡した。意識を失うほどの軍人としての矜恃を揺るがされたクラリッサは、唐突に空腹であることに気付き、赤面しつつもそれを受け取った。
「どうします?ニュースでは生存者なしと報道されてますね。この分だと、我々救出部隊の突入は無かったことにされているでしょう」
糧食を食べ終えたクラリッサにハンスは取り出したスマートフォンを投げ渡した。表示されているニュースサイトでは、クラリッサ達の基地が搬入中の爆薬の爆発事故によって吹き飛び、壊滅したと報道されていた。
「そんな……私たちは何のために──ラウラ隊長は何のために……」
クラリッサは生きなが
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