31部分:第五話 彩華ラーメンその八
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第五話 彩華ラーメンその八
「じゃあ止めるよ」
「わかったらいいわ。それで」
随分あちこちに飛んじゃいましたけれど話の本題です。
「ドーナツよね」
「そうそう、それそれ」
何かの真似みたいですけれど突っ込みませんでした。
「早く行こうよ、もうなくなっちゃうよ」
「なくなっちゃうよってねえ」
また勝手なことを言います。
「そもそもここに来たのも新一君が」
「過ぎたことはどうでもいいじゃない」
これです。何処まで勝手なんでしょう。
「だからさ」
「行くのね、今から」
「また後ろに乗って」
すっと立ち上がって私に言ってきました。
「それでいいよね。答えは聞いてないからさ」
「・・・・・・それは聞くものよ」
こんな調子なんだから。答えは聞いてないって何考えてるんでしょう。
「じゃあ答えは?」
「いいわよ」
それしかないですし。憮然として答えました。
「そういうことでね」
「そういえば先輩と一緒にドーナツ食べるのってはじめてだったっけ」
「いえ、違うわよ」
これははっきりと覚えています。
「ほら。高校の時」
「ああ、あの時」
新一君は私の言葉に思い出して頷きました。
「おぢばがえりの時だったよね」
「そうよ、詰所で。他にもあったかしら」
「そんなに食べてたっけ」
「私ドーナツ好きだから」
他にはケーキとかシュークリームとか。甘いもの大好きです。
「新一君いつも私にまとわりついてるし」
「いや、それは気のせいだよ」
気のせいには思えないんですけれど。高校三年になってからずっと新一君が一緒にいて困ってるんです。私は保護者じゃないのに保護者扱いにされたり。
「先輩の」
「そうかしら。あっ」
ここであることに気付きました。
「よく考えたら一緒にミスタードーナツに行くのははじめてよね」
「ああ、そうだったんだ」
新一君はそれを聞いてやっと納得した顔になりました。
「だからはじめてだったんだ」
「そういうことだったのね」
「うんうん。それじゃあさ」
新一君はにこにこと笑って私に言ってきます。
「また僕が運転するから」
「何かそれも楽しそうね」
「だってさ」
「だって?」
また何か言いだしました。余計なことを。
「先輩が僕に抱きついてくれるから」
「あっ」
そうでした。言われてそれに気付きます。
「じゃあそれが狙いで」
「おっと、失敗したかな」
「失敗も何も。ちょっと」
顔が真っ赤になります。それが狙いだったなんて不覚でした。
「抱きついていたら胸も」
「やっぱり小さいね」
「こ、この」
身体が震えてきます。まさか。まさか。
「許さないわよ、本当に」
「いやあ御免御免」
「御免じゃなくてね」
「それじゃあさ
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