3部分:第一話 はじめましてその三
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第一話 はじめましてその三
「ああ、いいよ」
「白石さん」
事務所には私の他に何人かいてくれるのが常です。今は白石さんという方がいてくれています。とても大柄で力持ちの人です。
「俺がいるから。阿波野君と一緒に行っておいで」
「そう言われるんでしたら」
「うん。じゃあ阿波野君御願いね」
白石さんはそう新一君に声をかけました。その時の彼の顔ときたら。
「了解です」
物凄く嬉しそうです。まるでピクニックに行くみたいに。どうしてそこまで楽しげなんだか。思わずそう尋ねたく思ったりもします。
「じゃあ先輩」
「わかったわ。じゃあ」
溜息を殺して彼に応えます。そうして事務所を出て。
「行きましょう」
「うん。じゃあ」
・・・・・・また仕掛けてきました。
腕を組もうとしてきました。こうしたこともしょっちゅうです。
「調子に乗らないのっ」
「今日も駄目なの?」
「今日も明日も駄目よ」
「じゃあ明後日は」
「ずっと駄目に決まってるでしょ」
古い考えって言われるでしょうけれど腕を組むなんて恋人とだけですよね。私実は今までずと彼氏とかいなくて経験も全然ないんですけれどそれでもこうしたことは大切にしたいんです。まして私は教会を継がないといけないですし。何かいつもいつもお気楽な新一君が羨ましいって思う時もあります。これは彼には言えないですけれど。
「腕を組むなんて」
「じゃあ手を繋ぐのは?」
「もっと駄目よ」
ふざけないでと言いたいです。そんなこと。
「言っておくけれど肩抱いたりしたら手つねるから。覚悟しておきなさいよ」
「いいじゃない。今頃そんなことでさ。いちいち言わなくても」
「言うわよ。それに私と神殿まで行くだけでしょ」
不機嫌な目で新一君を見上げて言いました。本当に背だけは高いです。そのせいで頭のてっぺんを見られてあれこれ言われるのは気持ちいいことじゃないですけれど。
「デートじゃないでしょ、違う?」
「僕はそれでもいいけれど」
「私はよくないの」
本当に真面目にしなさい、って言いたいです。
「とにかく行くわよ。いいわね」
「わかったよ。じゃあ神殿までね」
「二人で行くだけね」
何度も言葉に釘を入れてから二人並んで行きます。長い商店街を進んで今から神殿です。
第一話 完
2007・8・30
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