葛藤-コンフリクト-
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思い、携帯を取り出そうとした。
その時だった。その携帯に着信が鳴った。
「も、もしもし!」
『サイトさん、今そちらの方でビーストが現れました!すぐに急行し対処をお願いします!』
「そ、その声って…姫様!?」
『姫?…あの、私はアンリエッタです。我が家代々の使命に従い、チーム「ナイトレイダー」のリーダーで、あなたはその一員…お忘れになったんですか?』
電話の相手はアンリエッタであった。そう言われて、サイトは思い出した。彼女は我が校の成績優秀且つ美人で人徳ありの生徒会長。しかしその裏では、スペースビーストによって苦しめられる多くの人々を秘密裏に巣食うべく活動するグループ「ナイトレイダー」のリーダーを務めている。そして自分は……
そんな彼女の正義感に共感して力を貸している者…その一人だ。
(そ、そうだった。俺何を言い出してんだ?姫様って…そりゃ、ちょっとどこかの国の王女様って感じだけど…)
どうして思い出せなかったのだろうか。もしかして父親が冷蔵庫に仕舞っていた酒をジュースと間違えて飲んでしまったのだろうか。などと、シャレにならないことを予想している間に、公園の方から見えた巨大な影が、公園にて何かを襲って暴れていた。
地面から金切声のような鳴き声が響き、気色の悪い触手がうねりながら生えていた。
その下では3人ほどの子供たち、そして…彼らを守るように、ティファニアが子供たちを強く抱きしめながら少しずつ後退していた。
「うあああん…」
「大丈夫、お姉ちゃんがいるから…」
泣き止ませようにも、子供たちは恐怖のあまりその場で膝を着いて泣きじゃくってしまい、ティファニアも子供たちを置いていくことなど到底できず、逃げることもままならなかった。そして彼女自身も猛烈な恐怖で心が支配されかけていた。子供たちがいなかったら、逆に毅然としなければという意識さえもなかったかもしれない。体がすごく震えている。
(な、なんなの…この化け物たち…!?)
地面から生えたこの妙な触手が襲ってきたのは、数分前。ティファニアが公園で遊んでいる子供たちのもとに歩み寄ってきた途端、地面を突き破って現れた。そしてすかさず自分たちに向けてその触手を叩きつけてきた。だが彼らに直撃はせず、すぐ近くの地面を狙って触手はその身を振り落していた。この触手は…ビーストは人の恐怖をあおり、それを捕食する。獲物を美味しく仕上げるために、彼女たちの恐怖を煽ろうと、わざと彼女たちをすぐに殺そうとしなかったのだ。こんな化け物と遭遇するとは夢にも思わなかったテファたちがそれに気づくはずもなかった。
「キュオオオオオオ!!!」
「ッ!」
地面から怪物の鳴き声が聞こえる。何とか子供たちを守るために心を強く持とうとしていたティファニアだが、その鳴き声を聞くたびに恐怖で心が折れそうになった。
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