巻ノ百三十一 国崩しの攻めその八
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「そしてこの度はな」
「人ですか」
「人を攻めていますか」
「そうなのですか」
「そうじゃ、そうしておるのじゃ」
こう言うのだった。
「我等はな、だからこれでじゃ」
「この度の戦は勝つ」
「幕府がですか」
「そうなりますか」
「元々篭城をする時点でこうなることは半ば決まっておった」
大坂方が篭城したことについても言った。
「囲まれて出られなくなるのは火を見るより明らかじゃな」
「はい、それはわかります」
「まさに下の下の策です」
「茶々様が無理に言われたらしいですが」
「その結果ですな」
「だからわしは幕府についたのじゃ」
家康、彼にというのだ。
「幼君の右大臣様ではなく実権は茶々様にあって今もそうじゃが」
「茶々様は政が何もわかっておられませぬ」
「それこそ何一つとして」
「そして戦もです」
「全く分かっておられませぬ」
「それでいて非常に強情で強い癇癪を持たれておる」
そうした女だというのだ、茶々は。
「その様な方が大坂の主だからな」
「滅びる」
「そう確信されてすな」
「殿は幕府に入られた」
「左様でしたな」
「わしも大名、わし一人のことではない」
仕える家を選ぶこと、それはというのだ。
「お主達に家、そして何よりも民達のことがある」
「だからですな」
「滅びるとわかっている大坂にはつかず」
「何もわかっておられぬ茶々様ではなく大御所様ですな」
「あの方を選ばれたのですな」
「そうじゃ、そしてそのわしが言うのじゃ」
この度の戦のこともというのだ。
「これで幕府が勝つ、必ずな」
「大坂に弾が殆ど届かずとも」
「それでもですな」
「勝てる」
「そうなのですな」
「そうじゃ、必ず勝てる」
幕府はというのだ。
「だから安心せよ」
「はい、それでは」
「この度の戦を見させて頂きます」
「是非共」
「そうさせて頂きます」
家臣達は主の言葉に頷いた、そしてだった。
彼等は大坂城への砲撃を見た、それは実際に殆ど届いていなかった。だがそれでも茶々は大坂城の本丸で震えていた。
その状況を見てだ、家康に服部が話した。
「奥御殿に弾が届くやも知れませぬ」
「茶々殿のいるか」
「はい、そこにです」
まさにというのだ。
「強い追い風に乗せてですが」
「冬じゃ、風は強い」
家康は実際に大坂に流れる風を感じて大坂に応えた。
「ではな」
「はい、奥御殿に出来るだけ砲を近寄せ」
「そのうえでじゃ」
「撃ちますか」
「一発でも届けばよい」
砲の弾がというのだ。
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