絶対零度
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ザシュッ
突き刺さる両者の拳。鮮血が飛び散るその一瞬は、まるでスローモーションのように周りからは見えていた。
「ごはっ・・・」
吐血してその場に倒れる氷の神。それに対し天海は、胴体に穴が空いているにも関わらず、少年を見下ろしていた。
「俺の心残りは、貴様に勝てなかったこと・・・そして・・・
もうティオスと戦うことができないことだ」
彼はそう言うと、目を閉じて地面へと倒れ込む。二人の人智を凌駕した死闘は、ついに終わりを迎えた。
「レオン!!」
その瞬間、シェリアは幼馴染みの元へと駆け出していた。血の海に横たわる彼を抱き抱える。
「シェリア・・・」
「しゃべらないで!!今ウェンディたちのところに・・・」
そこまで言ったシェリアの口はあるものに塞がれてしまう。それがレオンの唇であることに気が付くまで、彼女は動きが止まっていた。
「ちょっ/////何を突然/////」
嬉しそうな、恥ずかしそうな顔をしているシェリア。そんなことをしている状況じゃないとわかっていた彼女は彼の顔を引き剥がしたが、その際にある異変に気が付いた。
「レオン・・・魔力が・・・」
出血していたことでただでさえ弱まっていた少年の体内から感じられる魔力が小さくなっていたのだ。その代わりに、体内からエーテルナノが消えて魔法が使えなくなったはずの少女の体から、わずかながらに魔力が感じられる。
「俺・・・の・・・魔力・・・もう・・・いらないから・・・シェリアに・・・」
「え・・・どういうこと・・・」
彼の言っている言葉の意味がわからず呆然としているシェリア。その間にも少年の目の輝きは、少しずつ失われている。
「俺が持ってる秘術の一つ・・・『魔力移し』・・・多分・・・明日くらいには・・・シェリアの魔力として使えるように・・・」
「違う!!そう言うことが聞きたいんじゃないの!!」
自身が行った秘術の説明をする少年の声を怒声で遮る。彼女は涙ながらに彼の顔を見つめていた。
「もういらないって・・・どういうこと・・・?」
彼が何を言いたいのか、そんなことは既にわかっていた。だが、それを認めたくない彼女は、必死に嫌な予感を消し去ってくれと言わんばかりに問いかける。
それなのに、少年の回答は非常なものだった。
「言葉通りだよ・・・俺には・・・もう魔力なんか・・・いらない・・・だって・・・これで終わっちゃうから・・・」
その言葉を聞いた瞬間、全員が目から流れてくるものを堪えきれなかった。口を抑え涙を必死に堪えようとするもの、耐えきれず地面に顔を伏せるもの、自分たちの未熟さに、地面を叩くもの。
「そんなことない!!レオンに
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