13部分:第三話 高校生と大学生その五
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第三話 高校生と大学生その五
「あんな子弟にいたらって思ったら」
「まあまあ」
「これも巡り合わせと思って」
「そうですか」
「ほら、そんなこと話してるうちに」
奥さんがエレベーターの方を指差します。するとその扉が開いて山村先生と新一君が戻って来ました。何か凄い早さです。
「あれ、もうなの」
「話すこと話したしさ」
新一君は軽い調子で私に言います。
「だから」
「怒られてたんじゃないの?」
「いや、全然」
彼は答えます。
「そんなことは」
「先生、そうなんですか?」
私は思わず先生に尋ねました。てっきりそうだと思っていたら。
「ああ、最初は何かと思ったがな」
先生もそう仰います。すっごくおかしな流れです。
「いや、そういうことならいい」
「いいって先生」
「中村」
次に私に顔を向けてきます。
「はい?」
「御前も大事にしろよ」
「大事にって?」
話が全然わかりません。ついつい首を傾げてしまいました。
「あの、どういうことですか?」
「あっ、先生」
ここで新一君が笑って先生に声をかけます。
「その話は」
「おっと、そうか」
先生は新一君に言われて笑って言葉を返します。
「それだったら止めておくか」
「ええ、そういうことで」
話が全然読めません。何が何なのかさえわからないうちに話は終わりました。それで先生は私と新一君に対して別れを告げるんです。
「じゃあな、二人共」
「は、はい」
「どうも」
戸惑ってる私と能天気な新一君。思えば凄い対比です。私はよくわからないままに先生に挨拶を返しました。先生はもう詰所から帰ろうとされています。
「おい阿波野」
最後にまた新一君に声をかけます。
「頑張れよ」
「了解っ」
ぴっと敬礼みたいな挨拶を右手でして先生に返礼してます。そういうところが本当に軽くて子供っぽいです。本人自覚してるかどうかわかりませんが。
先生は帰られました。そうしてそれを見届けた新一君は井本さん夫婦と私に顔を向けて思い出したようにして言うのでした。
「じゃあ漫画ですよね」
「あっ、そうだったわね」
奥さんがそれに気付いて声をあげます。
「じゃあ。御願いね」
「はい。先輩もですよね」
「ええ、私も」
私もふと思い出しました。彼のことを見ていると他のことが奇麗になくなっちゃいます。
「御願いするわ」
「お釣りは返すからね」
「当然よ・・・・・・いえ」
ここでふと考えが変わりました。
「別にいいわ。あげるわ」
「あれ、いいんだ」
「今日だけよ」
首を少し右に傾げさせて言います。
「特別サービスだから」
「ふうん。じゃあもらっておくね」
「ええ」
「じゃあ井本さん」
それを受けて井本さんご夫婦に
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