晩餐会 2
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ボクサーだって、こんな見事なフットワークなんて使えないぞ)
秋芳の天地に構えた両腕が、上下する。
右手の位置が左手の位置に、左手の位置が右手の位置に、円を描くように幾度も変わる。
円を描くたびに、内力がみなぎる。
「それ、なに」
「円空掌。遠心力てのがあるだろ。 円運動に生じる力で、回転の中心から遠ざかる向きに働く。これはその発勁版さ。蓄勁といって、こうしていると気が高まるんだ。遠心力をかけて放つ発剄は、波紋にも似た衝撃波で空をも破砕すると伝わる」
「じゃあ、時間をかけるとこちらが不利になるわね」
レニリアの右脚が秋芳のこめかみをめがけて走った。
速い。
まるで疾風の鞭のようだ。
秋芳は左肘を曲げてそれを受ける。
その瞬間、レニリアの体が宙に舞った。地にあった軸足である左脚で跳躍したのだ。その、跳躍した左脚の先が真下から鋭い弧を描いて秋芳のあごに翔んだ。
秋芳は右腕でそれを外側へ弾いてガードする。
レニリアはそのまま後ろへと体を回転させた。後方宙返りだ。
着地する瞬間を狙い、秋芳の円空掌が唸りをあげて迸った。
掌風が体に触れる寸前に、その力に逆らわずレニリアが翔んだ。
猫のように体を丸めたレニリアは秋芳の力を利用して後方へと翔んだのだ。後方には、木があった。
木を蹴って、秋芳に向かい跳躍する。
三角跳び。
全盛期の大山倍達がもちいた、敵の死角から飛び蹴りを放つ奇襲技をレニリアは使ったのだ。
これまでの動きはすべてフェイント。この一撃こそがレニリアの狙い。
声にならない裂帛の気合いがレニリアの桜色の唇から迸った。
天使の声をした、闘神のごとき雄叫びが――。
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