晩餐会 2
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げて両足を前後に開いた。
両腕を大きく天地に開いている。肘をまげた右腕が頭上前方に伸ばされ、左手はへそのあたりにくる。
受けにも攻めにも対応できる、均衡のとれた構えだった。
対峙する。
秋芳とレニリアは、よく似た体形をしていた。
秋芳は短身痩躯だが、無駄な肉がなく全身これ筋肉という体躯をしている。筋肉といってもボディービルで無理に作ったような肉体ではない。皮膚の下にある筋肉の束は完全に実用的なものばかりだ。
実戦となるとボディービルで作ったプロテインまみれの不自然な逆三角形の筋肉は、存外もろい。
筋肉の用途がちがうのだ。
秋芳の筋肉は強靭で柔軟性があり、安定感がある。それに対して、レニリアもまた細身ですらりとした肢体をしているが、脆弱さとはほど遠い。猫科の猛獣のごとき剣呑さと強さを秘めている。
身長は高くないが、腰が高く脚が長い。溌溂とした雰囲気と相まって少年のようにも見えるが、身体の線を露にしている黒装束の胸と尻の部分は妙齢の女性らしい主張をしていた。
(勇ましく美しい、十三妹を思わせる)
十三妹とは『児女英雄伝』という清の時代に書かれた大衆小説に登場する架空の人物で、本名を何玉鳳という。多くの映画や京劇の題材になっており、日本刀を手に悪人たちを成敗するバトルヒロインだ。
「どうしたの?」
「レニリア姫。あんた、綺麗だな」
「うん、知ってる」
「こうして素顔を見ると美人だ。そのことに、今気づいた」
「遅いわ」
「気づいたといえば、剣を学んだゼーロスという人物。たしか近衛兵の長じゃなかったか」
「ええ、王室親衛隊総隊長。ゼーロス=ドラグハート。四〇年前の奉神戦争を生き抜いた古強者よ」
「そして格闘術を学んだバーナードというのは……」
「特務分室に所属する執行官でも一番の古株で、こちらもまた奉神戦争で活躍した英傑よ」
「だから足技が達者なのか」
貴族たちが嗜む通常の拳闘術には「貴族的でない」という理由から蹴り技がない。だがアルザーノ帝国軍が採用している軍隊格闘術には蹴り技も入っている。
「ええ、もっとも翁――バーナードのことね。あのお爺ちゃんてば訓練中にやたらと体を触ってくるから、いやになっちゃって、初歩の初歩しか教えてもらってないの。格闘に関しては、ほぼ我流ね」
「それでこれだけの足技を使えるとは」
レニリアの体が動き出した。右に左に、風が吹くかのような、水が流れるような、舞うような、緩急自在の軽快玄妙な足運び。
それに合わせて、秋芳も動く。
レニリアに合わせて軸足を変えながら回る。
レニリアの動きが、徐々に速くなっていく。
奇妙なリズムだ。動いている手足の、どれが攻撃を仕掛けてくるのかわからない。
(プロの
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