晩餐会 2
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芳には通じない。
「剣の技は千変万化。身のこなしは緩急自在。だが、動から静、静から動へと移る一瞬に隙が出ている。相手を幻惑する剣舞の動きも、攻撃する瞬間を見切られては意味がない。実則虚之、虚則実之心――。虚と実は表裏一体。それを忘れるな」
「……」
「それと、剣と体が一致していない。心から剣を消して呼吸を以て操る。剣にとらわれ、みずからを見失ってはいけない。これぞ最大のあやまち。剣に心奪われれば、思うように動けず。本来の力を引き出すことができない。先ほども述べたが剣は手の延長。剣に、武器にとらわれるな」
「敗者は敵に敗れる前におのれに敗れる。心が平穏なればこそ勝機はあると言うわ。あなたの明鏡止水、乱してあげる!」
後ろに飛びすさり、距離をとったレニリアが剣の柄頭をレイピアの切っ先で突いて押し飛ばす。
「飛刀術か」
「《光あれ》!」
「なに!?」
レニリアの口から呪文が唱えられた。
黒魔【フラッシュ・ライト】。
光の球を放ち、指定空間上を任意のタイミングでストロボフラッシュのように光り輝き、その閃光に よって対象の視界を奪う。あくまで強烈な光を焚くのみ。だが直接魔力を介さない眩い光は間接的ゆえに三属攻性呪文や精神汚染呪文に備えた【トライ・レジスト】や【マインド・アップ】の効果も受けつけることはない。
その強烈な閃光とともに、レニリアの手からレイピアが投擲される。
双剣の特性を生かした二段重ねの飛刀術『双紫電・影貫』。二本目の剣が初撃の後に完全に隠れるため、受けるにせよ避けるにせよ相手に隙を生じさせ、仮に二本目もしのいでも急接近し、拳闘術を叩き込む。
レニリアはそれにさらに閃光の魔術を駆使したのだ。
フェイントをもちいた二段飛刀にダメ押しの閃光呪文。
閃光を避けるため目を閉じれば視界がふさがり、二本目の剣に貫かれる。
閉じなければ目を潰されて二本目の剣に貫かれる。
なんとか剣を避けても、拳闘術による攻撃にさらされる。
いずれにせよ相手の視覚を封殺し、戦闘能力を奪う、恐るべき手段だ。
「……やっと、あなたに技≠出させたわ」
肩を脱臼したかのように、だらりと下がった右腕を左手で押さえながらレニリアが満足そうな笑みを浮かべる。
「で、これはなに? けがはしてないけど、すっごく痛くて、まったく力が入らないんだけど」
「……まんまと技を出させられた、武の勝負で意表を突かれたのは久しぶりだ。いまのは寸指勁という。体内で練った気を指先に集中させて相手の経穴を点く。経穴というのは――」
「こっちの言葉でいう霊絡のことね。人の身体には経絡と呼ばれる気の流れる道があり、その経絡には秘孔や点穴とも呼ばれる、いくつもの経穴がある……。でしょ」
「そうだ」
「東方医学のシ
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