晩餐会 2
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秋芳の手にした剣に巻きつき、奪い取った。
「これ、こういう使いかたもできるの」
「まるでシャストアのマントだなぁ。それにこのレイピアもたいした業物じゃないか。セリカの持っていた剣に勝るとも劣らない出来だ。蝶を模した護拳の意匠も精巧で美しい」
秋芳が手にした細剣をしげしげと眺める。
「――ッ!」
レニリアのマントで剣を取られたとほぼ同時に、秋芳も相手の剣を奪い取っていたのだ。
「いつの間に……」
「此方に意識を集中するあまり、彼方がおろそかになる。よくあることだ」
「それにしても妙手ですこと。騎士爵殿はスリの技にも長けているのね」
「我が祖、賀茂の一族は修験道と縁の深い一族で、修験道は忍者と密接な関係だ。つまり俺は忍びの技を心得えている。そして偸盗術は忍術の基本だ」
「まぁ、ニンジャ! 一糸まとわぬ姿で敵の首を手刀で切り落とす達人ね」
「どこの世界のニンジャだ、それは」
「それ、返してくれる。交換よ」
そう言って手にした剣を地面に突き刺す。
秋芳もまた無言でそれに応じてレイピアを突き刺し、自分の剣を取ろうとする。
その寸前で秋芳の剣がマントにかすめ取られた。
レニリアが両手に剣を持っている。
「相手を欺くのは立派な兵法よ!」
「ごもっとも」
両手の剣を竜巻のように旋回させ、秋芳に斬りかかる。
二刀細剣の達人。『双紫電』の異名で呼ばれる王室親衛隊総隊長ゼーロス=ドラグハート直伝の剣が颶風と化す。
月光の下、両の剣が放つ銀光と黄金を溶かしたような豪奢な金髪の煌めきがひとつになり、白金の旋風のようだ。
だが、金色の剣風は秋芳の身には届かない。
どこからか、夜風に乗って軽快で優美な音楽が流れてくる。
ダンスホールで演奏されている円舞曲だ。
秋芳とレニリア。目まぐるしく交差するふたりの影は、まるで音楽に合わせてワルツを踊っているかのようだった。
ペアのダンサーのように、あるいはフリージャズのセッションのような。
ちがう楽器をあやつるふたりの奏者が自在に音をぶつけ合い、からめ合いながら音とリズムの三昧境に入っていく。足の運び、腰の動き、手の振りの緩急を自在にあやつり、心の想うままに相手にぶつけていく。
双剣と無手。異なる得物をあやつるふたりの演奏。ふたりの円舞。
いくたびもまじわり、交差する光と影。金と銀に彩られた、美しくも危険な双剣の舞が月明かりの下で延々と続く。
「――あたらないわ、まるで影を相手にしているよう」
左右二連の三段突き。合わせて六発の刺突はゼーロスの異名の由来となった、その名も『双紫電』。本来なら両手で持った剣で放つ三段突きの技『紫電』をさらに昇華し、両手双剣で驟雨の如く連発する脅威の絶技。
それが、幾度もちいても秋
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