よるの夢こそまこと
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鱗におおわれた体はまるで大昔の恐竜のよう。
さらにコウモリのような羽まではえている。
まさに怪物。
現実には存在するはずのない異形。悪夢の産物だ。
それが今、香澄の目の前に、いる。
(ま、夢の中だしね)
不思議と恐怖は感じなかった。そいつが襲ってくるまでは。
「GYAaaaッッッ!」
咆哮ととも振るわれた前脚による一撃をころげそうになりつつよける香澄。
これでも運動神経はいいほうだ。
「ちょっとっ、こんな展開あたし望んでないんだけどっ!」
よけた時のいきおいを利用してそのまま駆け出す。
なんとか逃げなければ。
どのくらい走っただろう。こんなに必死になって逃げるのは幼い頃、森の中でスズメバチに追いかけられた時以来だ。
それでも怪物はしつこく追いかけてくる。
すごいいきおいでせまったかと思えば、急に動きが鈍くなったり。かと思えばジャンプしていっきに距離をつめてくる。
まるで狩りを楽しんでいるようだ。
香澄を追いつめ、怖がらせるのがおもしろいかのよう。
そんな考えが浮かぶと、だんだんと腹が立ってきた。
怒りはやがて恐怖を駆逐する。
(……なんだって逃げてるのよ、自分の夢の中なのに!)
脳内が怒りMAX、怒髪天モードに切りかわった瞬間。足を止め、くるりとふり返る。
「ここがあたしの夢の中ならなんでもありよね? いいわよ、やってやろうじゃない!」
香澄の頭の中でヒーローが怪物をやっつけるイメージが、いままで見たアニメや映画。コミックや小説、ゲームの中の登場人物たちの勇姿がいくつも浮かぶ。
二丁拳銃を乱射する長髪の美女。長剣を振るう筋肉質の大男。槍を手に悪しき人造人間に立ち向かう少年。電気を自在にあやつる超能力者の少女。一騎当千の戦国武将――。
ああ、自分にも物語の登場人物たちのような力があれば!
そう願った瞬間、激しい光が突如としてあたりを照らす。
「――ッ!? なに、これ? 武器?」
香澄の右側に細身の剣が、左側に小ぶりの杖があらわれた。
「なによこれ? どっちか選びなさいっての?」
異形の怪物がせまってくる。
「剣か魔法の、どっちかってことよね?」
怪物がさらにせまる。
「なんかいかにもゲームみたい。いいわよ、せっかくだから・・・・・・、両方もらうわ!」
片手で剣を、もう片方の手で杖をつかみ、せまりくる怪物に立ち向かう。
「さぁ、かかってきなさい!」
そこで目が覚めた。
チュン チュン チュン
「…………へ?」
ポーポロー ポッポー ポーポロー ポッポー
窓からさしこむ光が顔にかかり、鳥の鳴き声が耳をうつ。
朝だ。
目覚まし
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