第四十四話 二人でお外に出てその十二
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「それからだから」
「そうですか、天理教にとっては有り難いことですね」
「どうして有り難いの?」
「先輩がそのままいてくれるからですよ」
私に笑って言ってきました。
「だからです」
「それでなの?」
「はい、アイドルでも信仰を続けられますけれど」
それでもというのです。
「先輩みたいな人が教会にいてくれるならそれはそれで」
「いいっていうの」
「はい、有り難いことですね」
「そんなこと言われたのはじめてよ」
もっと言えばこんなに私のことを可愛いとか奇麗とか言う子もはじめてです。何を考えているんでしょうか。
「本当に」
「そうですか?」
「そうよ、というかね」
私は阿波野君にさらに言いました。
「阿波野君だけが言うことって多いわよ」
「先輩にですか」
「そうよ、いつもね」
そうしたことが幾つあったでしょうか、それがわからない位です。
「そう言うけれど何なの?」
「何なのって言われましても」
「どうして私に言うのかわからないのよ」
どう考えてもです。
「それも私にだけよね」
「そうですね、こうしたことを言うのは」
阿波野君自身も言います。
「先輩に対してだけです」
「やっぱりそうじゃない、何で私になの?」
「それは僕がよく先輩の隣にいるからですね」
「呼んだこと一度もないし」
何故かよく会います、夏休みの今にしても。
「それでこういうこと言うし」
「言ったら駄目ですか」
「駄目じゃないけれど」
それでもです。
「阿波野君だけがだから」
「お嫌ですか」
「恥ずかしいのよ」
そう言われるとです。
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