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真田十勇士
巻ノ百三十一 国崩しの攻めその一
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                巻ノ百三十一  国崩しの攻め
 自身に届けられた文を見てだ、家康は満面の笑みを浮かべた。そのうえで傍に控える正純に対して言った。
「これはいいことじゃ」
「では」
「うむ、大坂からうって出るつもりであったが」
「それはですな」
「二日後とのことじゃ」
「そうですか、では」
「明日にはじゃ」
 まさにその時にはというのだ。
「あれが届くわ」
「そうですな、明日の朝からです」
「当たらずとも届かずともよい」
 家康はそれには構わないとした。
「撃つだけでいいのだ」
「それだけで」
「明日からはじめられるな」
「はい」
 まさにとだ、正純は家康に答えた。
「その様です」
「ではな」
「はい、大砲をですな」
「撃つのじゃ、しかし有楽殿も狸よのう」
「全くですな、大坂の諸将が茶々殿に言われると見れば」
「すぐに酒を勧めてくれたわ」
 それも二日酔いにまるまでだ。
「風邪までひくとはな」
「そしてその間にです」
「大砲が供えられる、若し大坂が今日にでもうって出ていれば」
「大砲どころではありませんでした」
「我等は大きな戦になっておった」 
 そうなっていたというのだ。
「まさにな」
「左様ですな、そしてです」
「ここにも軍勢が迫っておったかも知れぬ」
「そう思いますと」
「茶々殿が三日と言ったのはよかった、普通はじゃ」 
 戦を知っているのならとだ、家康は言った。
「ここでどう言うか」
「その日のうちにですな」
「攻めることを決めておった」
 そうだというのだ。
「それが戦じゃ、しかしな」
「それを茶々殿はですな」
「戦のことを何も知らぬからじゃ」 
 それ故にというのだ。
「何も考えなく言ったと思うがな」
「その何も考えなくもですな」
「戦を知らぬこと、そしてその戦を知らぬことがな」
「大坂の命取りとなりますな」
「この戦これで勝ったわ」 
 家康はにんまりと笑って言った。
「では明日からじゃ」
「いよいよですな」
「城攻めじゃ」 
 それに入ると言ってだ、そしてだった。
 家康は次の日の朝からだった、大砲達を城のすぐ傍に置いて激しく撃たせはじめた、幸村は真田丸でその音を聞いて言った。
「はじまったか」
「父上、明日にはです」
「うむ、うって出るとなっておったがな」
「はじまってしまいましたな」
「これで茶々様はじゃ」
 大坂城の主である彼女はというと。
「もうじゃ」
「何も出来ませぬか」
「外に出ることが決まっておってもな」
 それでもというのだ。
「肝心の茶々様が何も出来ぬ様になってはな」
「どうしようもないですか」
「今頃茶々様は本丸で震えておられる」
 幸村は大助に確信を以て話した。

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