125部分:第十七話 梅雨ですその三
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第十七話 梅雨ですその三
話をしていると。教室の窓には。
「うわっ、言ってる側から」
「降ってきたわよ」
「えっ!?」
二人の言葉を聞いてすぐに窓に顔を向けるとそこには。もっと嫌な嫌な気持ちになりました。
「何よ、あれって」
「雨じゃない」
「見ればわかるだろ」
「そういうことじゃなくて」
私が言いたいことはそういうことではありません。問題は雨が降っている。そのことなんです。どうして言っているその側からこんなことに。
「傘、持って来てないのに」
「そうだったの」
寮に置いてきたんです。失敗でした。
「それなのにどうして」
「それってまずいんじゃないの?」
自宅生の女の子の言葉です。
「ここから東寮までって結構距離あるわよね」
「ええ」
その通りです。少なくとも雨の中を歩くには嫌な距離です。簡単に濡れてしまう位の。その距離のことを考えるだけでまたいや〜〜な気持ちになります、本当に。
「下校までに止んでくれたらいいけれど。さもないと」
「さもないと?」
「夏服じゃない」
問題は濡れるだけじゃないんです。それもかなり問題なのは言うまでもないことですけれど。
「だから濡れたら」
「ああ、そうね」
女の子は私の言葉で察して納得した顔で頷いてくれました。けれど男の子の方は何が何なのかわからないといった顔できょとんとしています。
「!?何が?」
「ああ、わからなくていいわよ」
彼女が彼に言ってくれました。
「別にね」
「そうなんだ」
「そういうこと」
上手くこの場をフォローしてくれました。まさか濡れたらブラウスが透けちゃうなんて。何があっても男の子に言えることじゃないです。そういうことです。
「とにかく。また降るなんてね」
「昨日もその前の日も」
雨だったんです。雨ばかりみたいな。
「降ったのにな。本当に奈良県って雨が多いな」
「ぼやいても仕方ないけれどね」
それはその通りです。こればかりはどうしようもありません。
「まあ雨ってね」
彼女が言いました。
「これはこれで。お米が育つし」
「飲み水にもなるわね」
私もそれに合わせて相槌を打ちました。
「そういうこと。降ってくれないと困るものよ」
「そうなのよね。何か昔のおぢばは」
これは聞いたお話です。
「降らない時は全然降らなかったらしいけれど」
「そうなんだ」
「ほら、教祖伝にもあるじゃない」
おつとめをしてそこだけ雨が降ったっていう不思議なお話があります。奈良県は雨が多いイメージがありますが必ずしもそうではないみたいです。
「だからダムだってできたしね」
「そんなに困ってたんだ」
「あんた、天理市は住んでいないのよね」
自宅生の娘が彼に問い掛けました。
「そういえば」
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