れっつじょいん ばりぼーくらぶ 中編
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「よーし、新入生も歩いているから慎重にね」
新学期が始まって、入学式の次の日のこと。
はっきゅんのキューポラから顔を出した磯部キャプテンが、周囲360°を見渡しながら、できるだけスロープを使ってデモンストレーションの場所に指定された『学園中央広場』に、ゆっくりと向かっている
車体にはあの『バレー部復活!』の白ペンキ文字こそないものの、かつての聖グロ交流戦時のような大小のボールのステッカーが各面一枚ずつ貼られている。
いったいなんだと興味を持った新入生たちや上級生たちがぞろぞろと集まってきた。
この『ぎりぎり昭和生まれ。ただしヒトケタの方』戦車は、いまや茨城県人ならば知らぬ者のない「アヒルさん」だ。もちろん実物を生で見るのはこれが初めてという者もいっぱいいる。
「あれがアヒルさんかー」
「テレビで見るとすごくちっちゃかったけど、マイクロバスぐらいあるね」
実際にはっきゅんより小さな戦車は、これまでカルロベローチェ、FT17、U号戦車ぐらいしか登場していない。
そんなはっきゅんでも、身長185cmの西住小次郎が乗り込んでも頭がつかえたりしないのだ。
なお、秋山殿ポジションの高松殿は体重95kgの巨漢だった……
「えー、お集まりの皆さん。
私たちは戦車道『アヒルさんチーム』です。
昨年度はこの『はっきゅん』八九式中戦車とともに全国高校生大会、大学選抜戦、無限軌道杯を戦ってまいりました」
磯部は停車したはっきゅんの周りに集まってきた生徒たちにそうあいさつした。
生徒たちはそれぞれ拍手したり、口笛を吹いたりして喝采する。
これから何か始まるのはまちがいない。
しかし磯部は、注目する生徒たちに予想もしないことを言った。
「ごぞんじの方もいるかも知れませんが、私たちはバレーボール部員でした。
去年のちょうど今ごろ、私の努力がたりず、部員不足で廃部になってしまいました。
ここにいる三人はバレー部を選んでくれたのに、一度も試合に出たことがないのです。
私の代でバレー部をなくしてしまうことになれば、この三人やいままでバレー部の歴史を守り続けてきた先輩方になんとお詫びすればいいか、言葉もありませんでした」
こんな話になるとは誰も思っていなかったが、それでも生徒たちは皆静かに、磯部の次の言葉を待っている。
「私たちはバレーボール部の命運をかけて、戦車道に参加することにしました。
その戦車道は、この大洗女子学園自体の存続をかけて戦いました。
私たちの戦いはバレー部だけのものでなく、大洗女子そのもののためのものになりました。
ですから私たちはこの大洗女子が安泰になるのをこの目で見極めるまでは、バレー部のことはわきにおいて、この八九式、五人目のバ
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