れっつじょいん ばりぼーくらぶ 前編
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
2013年3月も、もうすぐ終わろうとしている。
大洗女子にとっての最大の懸案事項である「戦車道をどうするか」については、外部から仕掛けられた陰謀のおかげで1年間はモラトリアム状態となっている。
しかし生徒会長五十鈴華にとっては、もっと身近なところで、すぐにも解決しなくてはならない課題があった。
人員不足と予算を戦車道に振り向けるため、前会長角谷が廃部してしまったバレーボール部の今後についてだった。戦車道高校生全国大会でブリキ装甲、豆鉄砲の昭和五年製八九式を駆って、10年以上未来の戦車たち相手に一歩も引かず戦い抜いた『奇跡のアヒル』の母体である。
バレーボル部の部員は年度当初で2年生1名、1年生3名のわずか4人だった。
2年生主将の磯部典子はたったひとりで部の存続をかけて必死の部員勧誘を行ったが、入部したのは近藤妙子、河西忍、佐々木あけびの一年生3人だけ。バレーボールはレギュラーメンバーだけでも6人必要であり、この時点で部としての活動が不可能と判定されて、生徒会から廃部を言い渡されたのだ。たったひとりで奮闘した磯部や、入学したと同時に大好きなバレーボールの道が断たれてしまった近藤、河西、佐々木の無念はいかばかりであったろうか。
しかし、磯部たちはそれでもあきらめなかった。彼女たちは今度は戦車道授業を選択し、なぜか角谷がなりふり構わず立ち上げた戦車道で自らの力と存在意義を証明し、バレーボール部復活へとつなげようと考えた。彼女たちは、他の部活の好意で体育館の片隅を使わせてもらってわずかな練習を続ける一方で、本気で戦車道に立ち向かう。
だからアヒルさんは興味本位で参加した他のメンバーたちとは最初から意気込みが違った。
自分たちが掘り出した攻・防・走すべて貧弱で扱いも難しい八九式を「5人目のバレー部」と呼んで仲間として扱い、最後には自分たちの手足のように操るところにまで至った。たとえ効き目がなくとも撃った弾は必ず当て、準決勝、決勝戦ではどんな名手もおいそれと弾を当てられない「逆リベロ」にまで成長した。わずか3ヶ月ほどで。
本来ならば最も真剣でなければならなかったのは会長の角谷杏だったろう。しかし角谷は内心の感情を押し殺して「昼行灯」でありつづけた。他の履修生、とくに名門の出でありながら実際は小心な西住みほを萎縮させたくなかったのかも知れない。もっとも角谷も準決勝ともなればそんなことは言っておられず、みほを覚醒させ、自らも持てる力を発揮して戦った。
とにかく元バレー部は腕と戦術に努力と根性で、自分たちの実力を超える激闘を続けて圧倒的不利をひっくり返してみせたのだ。
角谷が大学選抜戦終了をもって会長を退任し、後任の会長が五十鈴華に決定したとき、角谷から引き継いだ事項の中に「磯部らのバレーボール部の再結成」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ