もう一度
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はそれに返答せず、天海に突進する。
(そう心配しないでくれ、シェリア)
自らの命と引き換えにしてでも敵を倒そうとしているように周りからは見えているだろう。そのことは彼自身が一番よくわかっている。
(でも、俺はこんなところで死ぬ気はねぇ)
歯を食い縛り懸命に蹴りを、拳を放つ。天海はそれをガードすることはできない。いや、しないのだ。彼も防御を取ろうとしない敵に負けじと攻撃を繰り出し続けているのだから。
(ここで俺が死んだら、シェリアの判断は間違いだったことになる)
皆を守るために魔法を失う判断を下したシェリア。もしここで自分が死んでしまっては、彼女の決死の判断が水の泡になるのはわかっていた。
もう取り返しがつかないレベルなのはよくわかっている。それでも、不器用な彼にできることは一つしかない。
「生きて勝つ!!あいつのためにも!!」
ブチッ
足を踏み出した瞬間、ガクッと速度が落ちたのを感じた。その理由は明白だった。
「動け・・・足ぃ・・・」
限界を越えてもなおも速度を上げようとする彼の意志に体がついてこない。未成熟な体は脆く、足の筋が切れている箇所が出てき始めているのだ。
「限界のようだな、お互いに」
両手を伸ばして羽交い締めにしようとするその手を受け止める。その相手の足が、腕が震えているのを少年は感じ取った。
「これ以上の戦いは俺にはできん。だからこそ、最後に貴様に勝つ。勝ってみせる」
天海の体もピークをとっくに越えていた。靭帯が、関節が、もはや正常に機能することはない。それほどまでのダメージを受けているにも関わらず、彼は力を込め、レオンを押していく。
「悪ぃけど、俺はこれが最後なんて思ってねぇぞ?」
最後の戦いと覚悟を決めて挑んでくる天海に対し、レオンは逆の意味での覚悟を決めていた。
もしここで勝ったとしても、自分が後遺症を受けるほどのダメージが残っていては意味がない。それではシェリアの心が持たなくなってしまう。
彼に必要なのは勝利と、これまで通りに過ごすことができる肉体。そのためには、ここで大きなダメージを受けることなど許されない。
「っ!!おおおおお!!」
押してくる敵を払い除ける。バランスの崩れた天海はよろけるようにして後方へと下がると、頬を膨らませる少年が視界に入る。
「氷神の怒号!!」
広範囲への威力のあるブレスを避けることなどできるはずもなく、瞬く間に吹き飛ばされる天海。その顔には戦闘を楽しむ狂戦士の面影は見られなかった。
「ハァ・・・ハァ・・・」
目から光が消え始めている天海。生気が感じられないほどに疲労している顔は、長期戦のせいで頬が痩けていた。
「ふっ!!」
それでも戦うことを彼がやめる
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