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越奥街道一軒茶屋
のびあがり
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道端に出た、というわけですな。

「そりゃたまげたでしょう。無事で何よりでさあ」

 やっと旦那は落ち着いてくれた。
 この辺りは一面うっそうとした森で、道から外れるとすぐに迷っちまうようなとこだ。
 旦那の言うようなことが起こったときゃ、大抵近くの地面を探れば……。

「こりゃ、やっぱり貉だなぁ。貉が旦那を化かしたみてえで」

「むじな……」

 ちょいちょいと手招きして、見つけた巣穴を旦那に見せる。
 まあわざわざ巣穴を探らなくとも、この辺はそーいうのが多いから、大体の見当はつくんですがね。

「旦那が見たのは、のびあがりってやつでさぁ。貉がデッカい人に化けるんだ。場合によっちゃ命まで取られることもあるらしいが、この辺のは優しいんで、安心してくだせえ」

 あっしの日課は、茶屋の他にもう一つ。それが、この近辺に出るバケモノから、旅人を守ることでしてね。まあ今回は何ともなかったけど、時に狂暴なのも出てきやがるから、そういうのに気を配ってるんでさぁ。

 旦那も、あっしの説明で納得安心してくれたみてえだ。

「どうですか旦那、これも何かの縁だ、うちで一服してってくれよ」

 あっしの茶屋、その名も奥越は、こんな具合の毎日でさぁ。
 人とバケモノの入り乱れる茶屋、どうでしょうかねぇ。

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