第五章
[8]前話
「余は何かとな」
「甘いものを広めていますな」
「砂糖にしても薩摩芋にしても」
「そして肝心の米も」
「全てそうですな」
「そう言われるとそうじゃ」
まさにというのだ。
「余は甘いものについてばかり政をしておるわ」
「米も薩摩芋も白砂糖も」
「全てですか」
「ではですか」
「そう言われることもですか」
「よい、面白い」
吉宗はまた笑った、そうして幕臣達に言うのだった。
「その呼び名覚えておくぞ」
「ではこれからも」
「民達に甘いものを楽しんでもらいますか」
「薩摩芋も白砂糖も」
「そして米とその菓子も」
「たんとな。甘いものが食せられるのはそれだけでよいことじゃ」
甘いもの、特に砂糖は中々民の口には入らなかった。だから果物が人気があるのだ。身近にある甘いものだからだ。
それでだ、彼等にその甘いものが安くしかも多く口に入ってそれを楽しむならとだ。吉宗も考えて言っているのだ。
「ではこれからもじゃ」
「民達にはですな」
「甘いものをふんだんに楽しんでもらい」
「そしてですな」
「上様もこれからも」
「その様にしていく、民が甘いものをふんだんに楽しめる様にしていく」
そうすると誓ってだ、吉宗は政に励むことを誓うのだった。
徳川吉宗というと米公方という呼び名が残っている、彼がそれだけ米を軸とした天下の経済と財政に腐心していたということを表している呼び名だ。しかしその彼が薩摩芋や白砂糖等甘いものが天下に広まることに尽力したことは歴史にある。その中でこうも呼ばれていたという。だがこのことは後世では広く伝わっていないのでここに書いておくことにした。
甘味公方 完
2017・12・20
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