第一章
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甘味公方
将軍になった徳川吉宗はとかく幕府の財政の立て直しと緩みかけていたたがの引き締め、そうして民の暮らしをよくすることに腐心していた。この三つのことを常に念頭に置いてどれが欠けてもならないと考えていた。
この時もだった、吉宗は江戸城の中でその大柄な普通の者より頭一つは優に大きな身体から言っていた。
「さて、天下の民は確かに飯を食しているか」
「それがですな」
「やはり問題ですな」
「うむ、天領の民達の年貢は安くしておるが」
その年貢は幕府は諸藩の手本になるべく低くしていた。
「しかと飯を食しておるかだが」
「はい、それですが」
「飢饉がありますと」
「やはり米や麦だけでは」
「幾分心配なところがあります」
「そうじゃな、それをどうするかじゃが」
考えつつ言う吉宗だった。
「米や麦だけで足りぬな」
「どうしても」
「それが現実です」
「特に東北は」
「何かあると飢饉ですから」
「天下の民達のことを思うとな」
吉宗は難しい顔で述べた。
「何か他に作物が欲しいのう」
「米や麦以外にですな」
「いざとなれば食える」
「そうしたものが」
「蕎麦があるが」
吉宗はここでこの作物を出した。
「あれは今も東北で食されておるな」
「はい、江戸でもです」
「この江戸でも蕎麦はよく食されておりまする」
「江戸の民達にとっては馴染みのものです」
「信濃でもそうですな」
「あれがあるがしかしな」
それでもと言う吉宗だった。
「もう一つ欲しい」
「蕎麦だけでは足らぬ」
「だから飢饉で多くの民が餓え死ぬことになっている」
「それでなのですか」
「他の作物を見付けてですか」
「それを民に栽培させていざという時に食させますか」
「その作物は何かないか」
吉宗はかなり真剣に幕臣達に問うた、そしてそうした作物を探させ彼自身何かないかと色々調べ考え探していたが。
ある日蘭学者の青木昆陽という者の話を聞いてだ、すぐにこの者の話を詳しく聞いた。
「薩摩芋というものをか」
「はい、その栽培をしておるとか」
「何でも痩せた土地でも多く採れるそうです」
「栽培の仕方も簡単で」
「しかも美味いとか」
「そうなのか、ではじゃ」
吉宗は幕臣達の話を聞いてすぐに言った。
「その青木という者を余の前に連れて来るのじゃ」
「上様が直々にお会いしてですか」
「そのうえで、ですか」
「その薩摩芋のことを確かめる」
「そうされますか」
「そうする、勿論薩摩芋を持って来る様にな」
青木昆陽に伝えろと言うことも忘れなかった、そして実際にだった。
吉宗は青木と会った、見れば学者というよりは百姓に近い匂いがあった。その青木は吉宗の前に赤茶色の何か太い根の様
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