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完全復讐
第四章

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「あっさりと」
「あっさりとですね」
「それも躊躇なく冷静に」
 そうしたのではというのだ。
「突き落としたのです」
「そうして殺した」
「二人目ですが」
 今度はアルコール中毒で死んだ者の話をした。
「こちらは一緒に飲もうと親しく言ったか酔い潰れている時に近寄り強い酒かアルコール自体をさらに飲ませ」
「そうしてですね」
「急性アルコール中毒にしてです」
「殺したのですね」
「そうでしょう、そして最後ですが」
 三人目はというと。
「彼の勤め先にそっと忍び込み」
「冷蔵庫に入ったところで、ですね」
「冷蔵庫の扉を閉めて内側からは開けられない様にした」
「外から鍵を閉めるなりして」
「そうして後は凍死させたのです」
「成程、ですがこの間」
「目撃例が一つもありませんね」
「まるで影ですね」
「そうです、影です」
 まさにというのだ。
「まるで影の様に犯人に近付き」
「誰にも見られることなく殺す」
「殺し屋でもここまで静かなタイプはいません」
「殺し屋は仕事だからね」
 殺人がとだ、ワトソンはこれまでホームズと共にいてそうした人間を見てきて知っているのだ。知りたくて知った訳ではないが。
「淡々と殺すことも出来るが」
「そう、しかしドクターエスはね」
「被害者の肉親というね」
「しかも兄として近い肉親だ」
「それでこうも淡々と殺せるか」
「人には感情がある」
 ホームズは一言で言った。
「だからね」
「その感情が出てね」
「こうも淡々と殺せるのはね」
「やはりドクターエスは被害者のお兄さんじゃないかな」
「そうかもね、しかし肉親でなくても」 
「この淡々とした殺し方はね」
「プロでもこうはいかないよ」
 それこそというのだ。
「ここまで見付からないのは」
「凄腕でないとね」
「そうだね」
「この三人を殺したのは誰か」
 刑事はここでホームズに問うた。
「それはですね」
「はい、間違いなく彼です」
「ドクターエスですね」
「そうです」
 このことは間違いないというのだ。
「状況からして確実です、しかし」
「彼が何者かは」
「わかりません」
 ホームズはその天才とさえ言われる推理を働かせた、だがどう考えても答えは出なかった。ドクターエスが何者かということについての。
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