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名探偵と料理人
番外編4(中編) 金田一少年の事件簿:怪盗紳士の殺人
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満天の星空の背景に微笑み、髪をなびかせてこちらに微笑む少女の絵は見る者を遠き日に見上げた夜空の元に誘う――この絵には単なる「美」、「芸術」を超越した何かがある。私ならこの絵に2億…いや5億出しても惜しくない!私が怪盗紳士なら真っ先にこの絵を狙うだろう!」

「…まあ確かにねえ。さっきギャラリーにある他の絵も見たけどやっぱりこれが別格よね」

「いえ…!」

ん?

「この絵を怪盗紳士が盗むなんてことはありえませんよ。なにしろ怪盗紳士はこの絵を一度盗んで返してきたんだから」

 

ああ、そういえば結構話題になったな。

 

「1度盗まれた?」

 

……一。少しは新聞とかテレビ、ネットニュースを観ようよ。

事情を知らない一に醍醐さんが説明してあげていた。半年前にこの絵が海外のとある絵画コンクールにこの絵を送り返してきたこと。そのことにより蒲生画伯の未発表の作品であることが世に知られることとなったという。しかもそのコンクールが世界的権威をもつものでグランプリをとったというからこの絵の価値はかなり上がっている。

さらにこの絵にまつわる顛末として、蒲生画伯がこの絵のモデルとしているのは生き別れた娘が成長した姿の想像図という事をマスコミに発表したのだ。

 

「私が生まれた頃お父さんはまだ売れない画家でしかもお母さんとは内縁の妻だったそうなの。でも私が5歳の時お母さんは私を連れてお父さんの前から姿を消したって…」

「「「「……」」」」

「大変だったのね、さくらさん」

「去年亡くなった母から、5年前に失踪した父は本当の父親じゃないって聞かされてて。それでグランプリを取ったあの絵を雑誌で見た時ひょっとしたと思って名乗って出たのよ」

「そりゃーたしかにびっくりしただろうなあ。自分そっくりの絵が海外のすっごいコンクールでグランプリを取ったって雑誌に載っていたらさ!」

「んん?でも待てよ?さくらお前、オレ達の学校に通ってた時は眼鏡におさげにで、今とは全然別人だったような?」

「それはね……」

 

さくらさんは胸元のぼたんを2つほどあけ、みんなに左の鎖骨が見えるようにした……一、ブラジャーに注目しないの。

 

「絵と同じ形のこのアザが決め手となって娘だと分かったのよ。お父様はこのあざを見るなり私を娘だと認めてくれたの」

 

左鎖骨の上に確かに蝶のような独特のあざが浮き出ていた。確かにあれがあれば断定できるか。

その後、再会したあとに剛三氏に痩せて、眼鏡からコンタクトに変えるように言われてその指示通りにすると今の姿になったというわけらしい。

 

「でも、流石は蒲生画伯ね!想像でさくらさんそっくりの絵を書けるなんてね」


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