暁 〜小説投稿サイト〜
名探偵と料理人
番外編4(前編) 金田一少年の事件簿:怪盗紳士の殺人
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空の溶剤瓶があったからなのに……」

「あ……いえね、実は人より五感が過敏でして。これくらい特徴的な匂いなら分かるんですよ」

「はあ、左様で……?」

 

俺と同じように樹に近づき、鼻を寄せてくんくんと嗅ぐ小宮山さん。

 

「うーん。私にはさっぱりです。やっぱり一角の人は五感をとっても凡人と比べて違う物なのですね」

「鍛えれば、誰でもいけますって。それで、この樹が燃やされたことに何か付随して気が滅入るような事でも?脅されているとか」

「ご慧眼恐れ入ります。実は先週、ご主人様がこの樹をモチーフにした絵画が一枚、とある泥棒に盗まれまして」

泥棒……

「その泥棒というのは捕まったんですか?」

「いいえ。そいつは「怪盗紳士」という泥棒でございまして、盗みを働く前に予告状を出しさらにはその絵になったモチーフも奪うと言うふざけた犯罪者なのです…」

「じゃあ、その樹が燃やされたのはそういう経緯があったというわけですか…」

 

怪盗キッドもまあふざけた奴だがただの破壊活動はしないからな。手段として変電所壊したりしてるけど。かなり乱暴な奴みたいだな、怪盗紳士って。確か絵画専門の泥棒なんだっけか。

 

「実はさらに立て続けに予告状が届いているのです。そのため警察の方も詰めていると言う次第でして」

「それは……ご心労お察しします。今日はよろしければ私が何か心休まるような一品お作りしましょうか?蒲生氏のご家族や好みを教えて頂ければそれに合わせて何か考えますが…」

「おお!それは有り難い!ですが今日はささやかながらパーティがありますので、そこはご主人様とご相談して頂ければ」

「…パーティ?」

「ええ。その新作「我が愛する娘の肖像」のお披露目パーティです。参加者はご主人様の知人やご友人などのごく少人数で行う物なのですが」

「へえ」

 

それはある意味職業柄得意分野だな。

 

「わかりました。それでは行きましょうか」

「ええ、こちらです」

 

 

――

 

 

小宮山さんに案内されて館の主である蒲生剛三氏と歓談した。その際に紹介されたのが女医である海津里美さん。彼の健康面のサポートを行っているそうだ。明言はされなかったがわざわざこんな山奥に通って、この場で紹介されるような間柄なのだから恐らくは恋人同士なのだろう。

挨拶もそこそこに、俺はその新作とやらを見せてもらう事となった。案内された部屋には誰もいなかった。そしてお目当ての絵は壁の高い所にかかっていた。

 

「へえ……とてもきれいな女性ですね。今にも絵から抜け出しそうな存在感があって、それでいて今すぐにでも消えてしまいそうな儚さが同居
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