第一章
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会ったことはないが
坂本龍馬は板垣退助と聞いてすぐに彼の名を聞いてきた志士達にこう言った。
「実は会ったことはないぜよ」
「そうなのですか」
「同じ土佐藩でも」
「お会いしたことはないですか」
「わしは商人みたいな郷士の家でじゃ」
龍馬は笑ってまずは自分のことを話した。
「あっちは二百二十石取りの上士じゃ」
「身分と立場が違う」
「だからですか」
「板垣さんのことは知らないですか」
「同じ土佐藩出身でも」
「脱藩したしのう、わしは」
龍馬はまた自分のことを話した、そうしてその縮れた髪を掻いた。
「そのこともあってじゃ」
「板垣さんは藩に留まられてますし」
「そのこともあってですか」
「郷士と上士の違いもあって」
「お付き合いはないですか」
「そうじゃ、同じ勤王の志士でもな」
それでもというのだ。
「どうしてもじゃ」
「お会いしたことはなく」
「お話されたこともですか」
「ないんですか」
「そもそもわしは上士が嫌いじゃ」
このことも話した龍馬だった。
「威張ってばかりでじゃ」
「ああ、土佐藩はそうですね」
「上下の差が厳しくて」
「上士は絶対でしたね」
「そうでしたね」
「それが嫌で脱藩した面もあるしのう」
そうした土佐藩にいては自由に動きにくいからだ、龍馬の脱藩は他にも色々理由があったがこのこともあったのだ。
「藩主だの上士だの郷士だのな」
「そうしたことはですね」
「お嫌いですね」
「それでは板垣殿も」
「あの御仁のことも」
「いや、確かに上士で付き合いはないが」
しかしと言う龍馬だった。
「あの御仁は禄に嫌いじゃないわ」
「そうなのですか」
「お付き合いはなくてもですか」
「上士の方でも」
「そうなのですか」
「凄いと聞いておるわ」
板垣退助という男はというのだ。
「それでじゃ」
「お嫌いではないですか」
「そして凄いとですか」
「認められていますか」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「特に嫌いではないわ」
「そうなのですね」
「そういえば」
ここで志士の一人が龍馬に問うた。
「板垣殿とは」
「血がつながってるとじゃな」
「そうでしたな」
「実はそうぜよ」
龍馬も笑ってこのことを認めた。
「それで昔から名は知っちょる」
「そうでしたか」
「板垣殿とはですか」
「お知り合いでもありましたか」
「いやいや、それが会ったことはじゃ」
それ自体はと断った龍馬だった。
「今もないぜよ、その話をしたくなったがいいかのう」
「我等の問いから」
「そうなられたのですか」
「そうぜよ、話したいがええかのう」
龍馬は今は都のある宿で志士達と軍鶏鍋を食べている、そうしつつま
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