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名探偵と料理人
第五十二話 -日常回-
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す。これが食べられなくなるだけですよ、でしたね」

「ありゃあ、一度でも食べてしまえば無理じゃよ。不正を犯すメリットとデメリットが釣り合わなさすぎる。しかもいい働きには美味しいものを別途贈っておるじゃろう?正直、社員どもが羨ましく思う事もあるくらいじゃ。龍斗君がその気になれば君の言う事をなんでも聞く軍団を作れるんじゃなかろうかの?」

「俺の料理は麻薬か何かですか……」

 

できなくはないけどね。する意味もないし、意義も感じない。

 

「それだけ魅力的だって事じゃよ……それで?ワシの大好物はどこかの?」

「ああ、それなら向こうの方ですよ」

「わかった!じゃあ龍斗君、楽しんで行ってくれい!」

「…いや、一応このパーティーのホストは俺なんだけど…」

 

俺が指差した方向にさっさと向かってしまった次郎吉さんには俺のつぶやきは届いていなかっただろう。まあいいや。俺も普段お世話になっている人との交流を深めるかね。

 

 

――

 

 

「ん?」

 

話もそこそこ楽しみ、箸休めも兼ねて飾られている美術品に目を向けていた。その中で俺は一つの絵画に目を止めていた。タイトルは……

 

「思い出、か」

 

人の思い出は人それぞれ。この絵に映る光景もこの画家さんの思い出なのだろうが、なんというかこれを見ていると俺自身の思い出の風景がこの絵を通して想起してくる。

美術品に関してはこれっぽちも理解はないがこの絵はいい絵だなと思う。

 

「おや、その絵が気に入ったのかい?龍斗君」

「次郎吉さん。ええ、なんというかこの絵を通して自分の思い出が頭に浮かび上がってきました。芸術の事なんかさっぱりですがこれはいいものだと思います」

「うむうむ。確かにこの絵はいい絵じゃのう!…そう言えば、確かウチの贔屓にしとる画商がこの画家の新作を買い付けにその画家の家を今度尋ねると言っておった」

「へえ。他にもこんな絵があるのなら見てみたいですね……」

「…ふむ、龍斗君がそんなことを言うのも珍しいの。よし、分かった!」

「分かった?」

「何も言わんでもええぞ。全てはワシに任せとけ!!」

「え?ちょっと、何……?」

 

がはははと高笑いをしながら、次郎吉さんは俺の質問に答えず去って行ってしまった。匂いや赤ら顔を察するにかなり酔っていたみたいだがなんだったんだろう?

 

 

――

 

 

「次郎吉さん…ありがたいけど、びっくりするよ」

 

俺は青森に来ていた。次郎吉さんは画商に俺の同行を取り付け、俺も件の画家の家を訪れることになったのだ。

なったのだが……そ
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