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名探偵と料理人
第五十二話 -日常回-
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「ふあ……」

「あ、おはよう龍斗君」

「おはようございます、夏さん」

「そういえば今日は一日走りながら都内を回るんだったね?それにしたってちょっと早いんじゃないかい?」

 

窓の外はまだ真っ暗だった。耳を澄ませてみれば、新聞配達の原付が走る音が聞こえる。

 

「最近はめっきり走る機会が減っちゃってましたからね。高校一年生までは定期的に走ってたんですけど」

「やっぱり体力をつけるため?……って、龍斗君には必要無さそうだけど」

「あはは。最初から体力があったわけじゃないですよ。体力をつけるためもありますが、大きなやりがいは走って景色を楽しむのが好きだからですかね?朝とか夕方、夜と気の赴くままに色んな時間に色んなルートを通ると人の営みや時間帯によって変わる風景を見るのが面白いんです。たまにその場その場にいる人と会話したりしますね」

 

まあ、楽しみすぎて母さんたちがいた時は門限ぎりぎりになってビルの間をぴょんぴょん飛んで帰ってたこともあったけどね。最近は時間が空いて気が向いた時にしか走っていなかった。今日は1日オフだったし、1日ジョギングを唐突に思い至ったわけだ。

 

「そっか。龍斗君にも料理以外の趣味があったんだね」

「ええ。走る時はいつもこの格好で……中学あがってからはマスクをつけたりしてますね」

「…上下黒のフードつきのジャージで、フード被ってマスク付けて走ってたらまるっきり不審者だね?」

「あはは……」

 

フードは普段は被らないんだけど、厄介事に巻き込まれそうになって被ったことが何回かあるんだよな。俺は夏さんと台所に並んで昼食、夕食用のおにぎりを握りながら走っていて遭遇した出来事を思い出していた。

 

「確かに中学終わるころにはこの体格でしたし、職質も何回か……ああそういえば、音楽を聞きながら走ってていたらテンションあがってきていつの間にかペースが上がっててパトカーに追い掛け回されてたってことがありましたよ」

 

どうやら巡回していた警官が話しかけたことに気付かず。警官は走って追いかけたが追いつけず、自転車にのった警官が応援に来て追いつけず、最終的にパトカーの出番になったそうだ。

パトカーでも最初は追いつけず、信号待ちしていた俺に話しかけてその騒動は幕を閉じた。

まあ俺としてはやましいことは無いし、大音量で音楽を聞くのはやめなさいと注意されただけだったが。

 

「それって、どんだけ早く走ってたんだい?目立っただろうに」

「人気のない所だったので。それで余計無視された警官もやっきになっちゃったんですよ。怪しいことをして逃げているんじゃないかってね……そう言えば警官と言えば」

「警官と言えば?
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