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名探偵と料理人
番外編3 金田一少年の事件簿:黒死蝶殺人事件
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ゃ、じゃあね。私、お魚が苦手なの…それと…」

 

それからいくつか好きなもの、嫌いなものを教えてもらった…嫌いなものにご当主が入っていたのは困ったけど。しかもあの男って…

 

「…じゃあね、おにいちゃん!楽しみにしてる!!」

「ああ、腕によりをかけて作るよ!」

 

そう言ってるりちゃんは走って去って行った。

 

「…驚きました。るりがあんなふうに表情を崩してあなたにこんな短時間に懐くなんて。あ、ひ、緋勇さん。さっきるりが言ったこと…」

 

さっき言ったこととはおそらく嫌いなものにご当主を言ったことだろう。

 

「大丈夫ですよ、誰にも言いません。彼女の言葉には嫌悪の中に彼女自身は気付いていない恐れがありました。あまり家庭の事情に突っ込みたくはありませんが…ひどく苦しんでいるようでした」

 

るりちゃんは普段、表情の動きのない子供なのだろう。それはある種の自己防衛だ。そう言う子は前世の孤児院で何人も目にしてきた。自分への体罰か、もしくは暴力にさらされている家族を目の当たりにし続けているか。多分後者だろうな。

彼女が俺に心を開いたのは簡単だ。人の鼻では関知できないある種の鎮静効果、リラックスできる香りをグルメ細胞で精製して彼女に向けて発しただけだ。これも前世で心を開いてくれない孤児院の子供たちへよくやっていたのですぐにできたわけだ。

 

「そう言う苦しんでいる子供を料理で笑顔にする…料理人冥利に尽きるじゃないですか。これは燃えてきましたよ…あ、それと周りに俺達の会話を聞いていた人はいません。だから安心してくださいね?」

 

そう言って、緑さんにもるりちゃんに発したものと同じ香りをだした。一般人には分からない、微妙にぎこちない動き…るりちゃんが苦しんでいるのは…

 

「え?ええ、わかりましたわ…緋勇さんは不思議な方ですね。傍にいるととても安心しますわ」

「ははは、よく言われます」

 

…はぁ、これは中々複雑な所に来てしまったようだ。

 

 

――

 

 

「おにいちゃん、お昼すっごく美味しかったよ!お礼にるりが屋敷を案内してあげる!」

 

斑目家の食堂で、会っていなかった長女舘羽とその婚約者小野寺、次女揚羽と自己紹介をし合い、昼食会は始まった。高齢のご当主の事を考えて、見た目ではわからないような食べやすい工夫を施したが、意外や意外。健啖家だったらしく一族の中で一番に食べ終わっていた。内容も大満足だったらしく、夜も期待しているとの言葉を残し彼は自室へと戻って行った。

彼が部屋を辞した瞬間、感嘆の声しか上がっていなかった食堂は話し声で騒々しくなった。やはり、ご当主は皆か
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