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エアツェルング・フォン・ザイン
そのさんじゅうに
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声がしてそちらを見ると、レミィがベッドに腰掛け、咲夜がフッと消えたところだった。

「状況説明ぷりーづ」

「御茶会の途中、貴方が何かが割れる音がすると言って暫くしたら、貴方が倒れたのよ」

「ふーん…」

あの後か…さっき見た夢が関係あるのか?

「それで、何があったのかしら?」

「知らん。例の音の後、倒れた…んだろ?
それと夢を見ていた」

「夢…ね。聞かないでおくわ」

抱き付いていたフランが更に強く抱き締める。

「おー?どうしたフラン?」

「ごめん…なさい。私が、血を吸ったから…」

どうやらかなり気にしているようだ。

「まーまー、落ち着け。それにそんなに気にやむ事は無い」

ポフポフと頭を撫でて、ギュッと抱き締める。

「ほんとうに?」

「勿論だ。それに…いや、なんでもない」

踏ん切りも付いたしな。

吸血鬼の因子を得たなら、俺は既に夜の眷属である。

もう、葵やショウや照明、キリト、アスナとは、住む世界が真反対なのだ。

ガチャリとドアが開き、パチュリーと咲夜が入ってきた。

「目が覚めたのね」

「おう」

「起き上がれるかしら?出来れば図書館で精密検査と行きたいのだけれど」

図書館で精密検査とはまたシュールな字面だ。

「ああ、直ぐに行く」













魔方陣の真ん中。

ついさっきも立ったその場所に再び入る。

そうして…

「ザイン。結果が出たわよ」

パチュリーに渡された紙に目を通す。

「ん?」

その途中の欄が目に入る。

「なんか吸血鬼性上がってない?」

「ええ、その通りよ。
貴方の中の吸血鬼性が、満月で急速に強まったようね」

「ふーん…」

「今の貴方は本当に"半"吸血鬼ね」

「ふーん」

まぁ、ぶっちゃけどうでも良い。

だってさぁ、幻想郷に来て妖精になって、その上武神でもあるとか紫が言ってたんだよ?

つまるところ、『種族なんて今さら、ねぇ?』ということである。

「あら?興味無さげね」

「あー?今さら種族とかどうでも良いからなー」

「あら、種族は重要よ?
根底となる物が揺らげば存在が消えてしまうもの」

「俺の根底は、人間でも妖精でも妖怪でも神でも吸血鬼でもない。
俺が生きた240年。
それが変わることはない。
種族なんぞ関係ねぇのさ」

200年以上、騎士として仕えた。

清く正しい騎士道、そんな物は持っていない。

その代わり、持っていたのは『あの二人』を何としてでも護るという意志と、あの世界への愛。

「240年ね…そう。わかったわ。
もう行って良いわよ」

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