【雨の向日葵】
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「──?ネジ、今日は少し遠くまでお出かけしようか」
「はい! 父さま、どこへ行くんですか?」
「フフ、着いてからのお楽しみだ。私はお前を抱っこして行くから、お前は目をつむっているんだよ。覚えたての白眼を使ったら、駄目だからな?」
──────
「さぁネジ、もう目を開いてもいいぞ」
「わぁ……、ひまわりがいっぱい…! うちの庭よりいっぱい咲いてる!」
──そこは、背の高い向日葵が咲き乱れる向日葵畑だった。
父ヒザシは幼い息子のネジを肩車し、迷路のような向日葵畑を共に散策する。
ネジは向日葵と同じくらいに背が高くなった気分で向日葵に触れ、楽しそうにしている。
……それから、どれくらいの時間が経ったろう。
ふと、肩車から降ろされる。
「ネジ……そろそろ私は、行かなければいけない」
「え? もう帰るんですか…?」
「違うんだ……先に、行かなければいけないんだよ」
目線を合わせるように身を低め、どこか哀しそうにヒザシは微笑する。
「独りで……帰れるな、ネジ?」
「いやです、父さまといっしょに帰りたい……!」
「すまないな……この先へは一緒に行けないんだ」
「どうして、父さま……?」
「追いかけて来てはいけないよ、戻れなくなるかもしれないから」
ヒザシはおもむろに立ち上がり、幼い息子に背を向けて歩き出す。
「まって父さま、行かないで…っ」
追いかけようとするが、父親はどんどん先へ行ってしまい追いつけず、とうとう向日葵畑の中に姿が紛れて分からなくなる。覚えたての白眼を使ってみても、その姿を捉える事は出来なかった。
「父さま……どうして、いなくなっちゃったの……?」
幼いネジは背の高い向日葵畑の中で蹲り、後から後から流れ出る涙で小さな膝を濡らした。
「──?ねぇ、あなたはどうして泣いてるの?」
不意に声がして顔を上げると、自分と同じくらいの年頃の子が不思議そうな顔をして身を屈め、こちらを覗き込むように見ていた。
「わたしね、ヒマワリっていうの! あなたは?」
「ネジ……、ひゅうがネジって、いうんだ」
「へぇ…! ヒマのおじさんと、おんなじ名前だね!」
女の子は顔を輝かせた。
「ヒマはね、おじさんと一緒にひまわり畑に来たんだよ! だけど、いつの間にかはぐれちゃったの!」
その割に女の子は楽しそうにしている。
「ネジくんは、パパとはぐれちゃったの?」
「パパじゃない……父さまだよ」
「そっかぁ……じゃあヒマといっしょに、父さまとおじさんさがそ!」
ヒマワリという子はネジの手を引いて立たせ、そのまま一緒に向日葵
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