【雨の向日葵】
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畑を駆け出す。
「あははっ、たのしいねぇ!」
「た、たのしくなんかないよ。はやく父さまを見つけなきゃ──」
「わっ」
ヒマワリという子は何かにぶつかったみたいに、急に足を止める。
「……あ、ネジおじさん!」
その呼びかけに幼いネジが顔を上げると、自分の父親の面影を持った人物が少し驚いた表情でこちらを見下ろしていた。
「ヒマワリ……すまない、何故だか白眼が一時的に使用出来なくなって、見つけるのに手間取ってしまった」
「ううん、だいじょおぶだよ! おともだちも見つけたもんっ」
「お友達、か……。君の、名前は?」
幼いネジは動揺してしまい、問いかけに答えられずにいるとヒマワリが勝手に紹介する。
「ネジくんっていうんだよ! ネジおじさんとおんなじ名前なの!」
「そうなのか……それは奇遇だな」
おじさんと呼ばれているネジは、幼いネジに目線を合わせるように姿勢を低めて優しい微笑を浮かべる。
「ネジ君……、君の親御さんは、どうしたんだ? 一緒に、この向日葵畑に来たんじゃないのかい?」
「父さまと、はぐれて……ううん、父さまは……いなくなっちゃったんだ。もう、あえないんだ…っ」
幼いネジは心のどこかでそう確信してしまい、肩を震わせ俯き大粒の涙を流す。
「そうか……やはり君も、そうなんだな」
労るような言葉と共に、おじさんのネジは幼いネジをぎゅっと抱きしめる。
「やめてよ、いたいよ……。あなたは、父さまと似てるけど、父さまじゃない……!」
幼いネジは大人のネジの腕の中から離れようともがく。
「あぁ……そうだな、すまない。独りで……還れるか」
「帰れるよ。……帰らなきゃ、いけないんだ。父さまが、居なくても」
「そうか……、気をつけてな」
大人のネジはそれ以上何も言えず、僅かに憂えた表情で幼いネジから離れて立ち上がる。
「ねぇ……、あなたは今、しあわせ……なの?」
涙目で見上げてくる不意の幼いネジの問いに、大人のネジは一瞬言葉を詰まらせたが、柔らかな表情を見せ穏やかな口調で答える。
「幸せだと、言えるだろう。君も……きっといつか」
「──はいっ、ネジくん、ヒマのひまわりの種あげる!」
幼いネジの手をとって、その手の平に幾つか種を手渡すヒマワリ。
「ネジくん、きっとまた、ヒマと会おうね! やくそく、だよっ!」
「うん……、わかったよ。やくそく、する。だから……まっててよ、ヒマワリ」
「うん、まってる! ネジおじさん、ヒマたちもそろそろ帰ろ? パパもママも、お兄ちゃんもまってるよっ!」
「あぁ、そうだなヒマワリ。……それじゃあ、ネジ君、また……きっと
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