巻ノ百三十 三日その十二
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「つながっていて」
「あえて幕府の利益になる様にか」
「動かれているのでは」
「まさかと思うが」
「いえ、かなりあやしいかと」
こう言ってきたのは幸村だった。
「有楽殿は」
「まさか」
「はい、十勇士達がです」
彼の忠実な腹心であり義兄弟であり友でもある彼等がというのだ。
「見ておりますが」
「怪しいですか」
「家臣が度々城の外に矢を放っておりますが」
「まさかその矢に」
「文がある様で」
結ばれたそれがというのだ。
「ですから」
「あの御仁はですか」
「怪しいかと、酒もです」
「我等が来ると思い先回りして」
「茶々様に飲んで頂いたかと」
「それがし達を退かる為に」
「そうかも知れませぬ」
こう話す幸村だった。
「そしてそれがです」
「我等にですな」
「悪きことにならねばいいですが」
幸村は三日待てばそれが危ういことになるのではと危惧していた、戦はその三日で決まることもまた多いことがわかっていたからだ。
それで言おうとしたが出来なかった、それでだった。
次の日も朝に諸将と共に茶々に会いに行こうとしたが。
「風邪、ですか」
「二日酔いのうえに」
「それでなのですか」
「その様じゃ」
秀頼に会えたがその秀頼が諸将に困った顔で話した。
「それでな、お会いすることは出来ぬ」
「では」
大野が言ってきた。
「我等は」
「うむ、仕方がない」
「そうなりますか」
「あと二日で外にうって出られる」
それでとだ、秀頼は諸将に宥める顔で述べた。
「だからあと二日待ってくれ」
「わかり申した」
「それでは」
「その頃には母上も元気になられるであろうしな、二日酔いは酒が抜けて明後日には風邪も治っておるわ」
そうなるというのだ。
「そしてその時にはな」
「外にうって出られる」
「そうしてですな」
「勝てる」
「その様になりますな」
「だから安心せよ」
こう言うのだった、そしてだった。
諸将を和やかにさせるが彼等の危惧は収まらなかった。そうして時がいたずらに過ぎていくのだった。
巻ノ百三十 完
2017・11・8
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