巻ノ百三十 三日その八
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「策を弄し人を弄ぶ様な御仁は」
「確かに。そうして権勢を奢る者なぞ」
「終わりが全う出来る筈がありませぬ」
「ではそれがしは」
「ご不満はあれども」
それでもというのだ。
「ここはです」
「軽挙妄動はせずに」
「時を待たれて下さい」
彼が忌み嫌う正純、もっと言えば本多家が報いを受ける時をというのだ。
「そうされて下さい」
「わかり申した、それでは」
「その様に」
二人でこうした話もした、幕府は幕府でいがみ合う者達もいた。そのことは今は表に出ていなかったが確かにあった。
そして大坂ではだ、治房が治胤と共に長兄である大野に言っていた。
「兄上、茶々様の御前に行かれるならです」
「我等もお供します」
「そして三人で、です」
「茶々様に申し上げましょう」
「わしが茶々様にきつく言えぬからか」
大野は苦い顔で弟達に応えた。
「だからか」
「あえて申し上げますと」
「そうなります」
二人は兄に申し訳にくそうだがそれでもこう答えた。
「今は急の時です」
「茶々様にうって出ることを認めてもらうべきです」
「大坂城にただ篭るのではなく」
「そうすべきですから」
「そうじゃ、それはわかっておる」
確かな顔でだ、大野も弟達に答えた。
「わしもな」
「はい、是非です」
「茶々様を説得しましょう」
「さもないと大砲が放たれます」
「真田殿達が言われる通りです」
「茶々様が大砲の音を聞かれるとな」
どうなるかとだ、大野はこのことをあえて言った。
「やはりな」
「はい、その時はです」
「恐ろしいことになり申す」
「その時茶々様が怯えられてどう言われるか」
「それを思いますと」
「わしもわかっておる、ではな」
それではとだ、大野は顔を上げてだった。弟達に言った。
「ではじゃ」
「はい、三人で参上しましょう」
「茶々様の御前に」
「これよりです」
「そうしましょう」
「ではな」
大野は弟達が自分と共に茶々の前に来ることを認めた、彼にしても状況がわかっていただけにそうしたのだ。
そして三人で茶々に今の状況を話してそのうえでうって出ることを必死に申し出た。するとだった。
茶々もだ、一旦目を閉じてから再び開いて三人に話した。
「ではな」
「これよりですな」
「うむ、三日後にな」
この時にとだ、茶々は大野に特に考えることなく述べた。
「うって出よ」
「そうして宜しいのですな」
「しかし右大臣殿は本丸におられてじゃ」
秀頼のことも話すのだった。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですか」
「修理、お主が右大臣殿をお護りするのじゃ」
「軍を率いてですな」
「この城においてな」
「わかり申した、ではです」
大野は茶々にさらに言った。
「ここには
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