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犬神
第三章

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「別にね」
「いえ、お邪魔させてもらいますし」
「それじゃあこれ位当然ですよ」
「叔母さんも楽しておいてね」
「そう言ってくれるのね」
 妻はその言葉だけで充分だった、だが。
 三人は実際に家にいる間家事もちゃんとしてそのうえで三人一緒に大阪見物に出た。進次郎は仕事に出ていて妻が息子を託児所に預けてから三人を朝から夕方遅くまで大阪のあちこちを紹介していった。
 そして都島区にある自宅に戻るとだ、三人は進次郎に笑顔で言った。
「通天閣登りました」
「あそこで串カツ食べたよ」
「難波にも行ってきたわ」
「ビリケンさん面白い外見ですね」
「二度漬けはしなかったからね」
「自由軒のカレー美味しかったよ」
 こう進次郎に言うのだった。
「明日は北の方行くから」
「梅田の方にね」
「そこも楽しみですね」
「喜んでもらえるから」
 案内役の妻も言う。
「私も嬉しいわ」
「そうか、それでこの料理もだよな」
 進次郎は今出ている鰹のタタキを見つつ妻に問うた。
「この娘達も」
「そう、手伝ってくれたの」
 妻もこう返す。
「お味噌汁と野菜のお浸しもね」
「静流ちゃん達が手伝ってくれたのか」
「むしろこの娘達がしてくれたのよ」
「そうなのか」
「お料理上手よ、三人共」
 妻は笑顔で太鼓判を押した。
「本当に」
「そうか、それは何よりだな」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「私今家事あまりしてないの」
 料理だけでなくというのだ。
「三人がせっせと動いてくれるから」
「そこまでか」
「ええ、凄いわ」
「家でお母さんにいつも言われてまして」
「家事は全部出来る様になりなさいってね」
「兄貴には言わないけれどね」 
 三人で言ってきた。
「私達は女の子だからって」
「家事は全部身に着けろってね」
「いつも言われてますし」
「そういえば実家に帰ったら」
 進次郎はその時のことをここで思い出した。
「三人共家事をしてるね、それで淳太郎君は家の仕事に励んでるね」
「そうよね、あの子は」
「うん、立派に漁師してるね」
「そうよね」
 妻は夫のその言葉に頷いた。
「あの子はあの子でね」
「水産大学出てからね」
「立派に働いてるわね」
「兄さんも頑張ってまるし」
「将来の綱元さんとしてね」
「だから家事はあたし達がってなっててね」
 また三人が言ってきた。
「それでなのよ」
「家事も仕込まれてるわ」
「ですからそれなりに自信もあります」
「ううん、三人の誰かを奥さんに出来たら」
 進次郎はかなり真剣に思った。
「その子は幸せ者だよ」
「そうよね、じゃあ明日はね」
 妻はまた言った。
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