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一つ目小僧
第四章

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「一つ目小僧のこともあるしな」
「それでなのね」
「ああ、境内見て回ろうな」
 お寺の中をというのだ。
「そうしような」
「それじゃあね」
 未佳が頷きあかりも続いてだ、そしてだった。
 三人でまずは音が聴こえる方に行った、するとそこでは。
 キャップ帽子、阪神タイガースのそれを普通とは逆に被って赤いシャツと青い膝までのズボン、シューズという恰好の男の子が寺の住職さんと一緒に踊っていた、傍にラジカセがありそこからラップが聴こえている。
 二人でそのラップに合わせて踊っている、それを見てだった。
 未佳は眉を顰めさせてだ、兄とあかりに言った。
「住職さん実際にね」
「踊ってるな」
「そうしてるわね、ラップ」
「まさかと思ったけれど」
 未佳はさらに言った。
「住職さんが本当にラップ踊ってるなんて」
「あの」
 あかりも言ってきた。
「お隣の如何にもな恰好の子は」
「?あの子は」
 未佳はあかりに言われその子を見た、見れば。
 その子供は一つ目、普通目が二つあるところに大きな一つ目があった。未佳はその顔を見て言った。
「一つ目小僧?」
「そうよね」
「あの、住職さんと一緒にね」
「ラップ踊ってるわね」
「何、この凄い光景」
「想像してなかったけれど」
「これは」
 二人で唖然となっている、そして。 
 音楽が終わったところでだ、ラッパーそのものの恰好をしている一つ目小僧が還暦位の僧侶を服を着たお坊さん、この寺の住職さんに笑顔で言った。
「お互い大分上手になったね」
「そうじゃのう」
 住職さんは一つ目小僧に笑顔で応えた。
「よいことじゃ」
「そうだよね」
「うむ、しかしラップでお経を詠んでな」
「踊るってのもね」
「いいのう」
「これも修行だね」
「そうじゃな」
 住職さんも笑顔で応えた。
「修行も時代によって変わってな」
「お経の読み方もなんだ」
「これは最近天理教でもあってな」
「あの宗教でも?」
「教えをラップで歌うこともあるそうじゃ」
「それで仏教もなんだ」
「それをやってみたが」
 お経をラップで踊りつつ詠うこともというのだ。
「ふむ。これもな」
「いい修行だね」
「全くじゃ」
「あの、いいですか?」
 未佳は楽しく話す二人に右手を挙げて言ってきた。
「さっきから黙って見てましたけれど」
「あれっ、女の子が夜遅く出歩いたらいけないよ」
 一つ目小僧はその未佳にタオルで顔の汗を拭きながら注意した。
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