序章
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ように当主を見送った。
「っ……」
唇を強く紡いだまま桜は何も言えなくなっていた、当主が言っていた事は全て真実であり全て正しい事だったからだ。自分の行動は全く褒められた物ではなかった、下手をすれば自分の手で父親を殺しかねない物ばかりだったのだから。その場で耐えている事が出来なくなり自室にあった薙刀を手に取ると唯只管に振り始めた、父親のあの声の重圧から逃げるように……。
「もう半月ですね……大地様大丈夫でしょうか……?」
「……知らない」
半月が経過した頃。今日も日は高く陽気な天気が続いている中でイツ花は大地の布団を干しながら思わず呟いた。自分がこうして家の事をやっている間も刀を振るって鬼を切り裂き返り血で戦装束を汚してながらも必死に戦っているのだろうかと、付き合いで言えば長い方のイツ花は酷く心配そうだった。桜にとってはそれは夫の帰りを待つ妻のように見えて面白くなかった。新術の習得も梃子摺っており前に進めていない、苛立たしげな毎日が続いていた。
「あっそうでした、桜様少しお願いがあるんですか良いですか?」
「お願い?」
「はい、確か今日はお野菜とかが安い筈なのでひとっ走り行ってきますのでお留守番お願いしても良いですか」
「分かったよ、留守番はしてるからイツ花先生行ってらっしゃい。その代わり今日は焼き魚にしてよ」
「はい、バ〜ンっと!お任せください!!」
駆け出していくイツ花を見送ると思わず溜息を付いてしまった。少しでも考え事をすると父の事が思い浮かんでしまう、父の恐ろしい声と威圧感が何時までも自分を呪縛している。母であるお焔からは
『大地の事かぁ、そうだねぇ一言で言うと優しい男さね。確かに肌は重ねたけどいきなりって訳じゃないよ?交神の儀は一ヶ月の間一緒に居て互いの絆と精神を合わせて行ってから子供を作るからね。アタシの絵を書いて貰ったり歌を作ったり多趣味だったね。まあ色んな事をしたけど優しくて思いやりのある男だったよ♪』
機嫌良さそうに語る母だった、しかし自分にとっては顔を見た事もない父の事などよりも母と一緒に居たかったしもっと生きたいという思いが強かった。大地がいなければ自分がいなかったのは分かっているが如何にも割り切れていなかった。
「ああもう!!イツ花先生もいない今のうちにあの人の部屋でも荒らしてやろうっと!!!」
こうもイラつくのはあの人のせいなんだから辺り散らしてやろう、この位良いだろうと勢い立ち上がると一度自分の部屋にある薙刀を握って当主の部屋へと駆け込んで行った。何かあったらこれでぶった切ってやろうという魂胆だ、いざ襖を開けながら薙刀を構えたが思わず絶句した。自分の部屋には少なからず風景画や掛け軸やら娯楽の為の物があったのに当主の部屋は酷く殺風景な物であった。机に座布団、衣服
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